(非経理出身の)監査役による会計監査のチェックポイント

  • 経理部門のご出身ではない状態で会計監査の責任を負うことに対し、「専門用語がわからない」「数字の計算や会計基準のチェックができるだろうか」とプレッシャーに感じられるかもしれません。


  • しかし、結論から申し上げますと、常勤監査役ご自身が会計基準の専門家になる必要はありません。 精緻な会計処理の適法性や計算の正確性は、専門家である「監査法人」がチェックします。


  • 非経理出身の監査役が最大限に強みを発揮すべきは、計算ではなく「ビジネスの実態と数字に違和感がないか(ビジネスセンスでのチェック)」「不正が起きない業務プロセスになっているか」」です。


経理出身ではない監査役が持つべき視点を、4つのカテゴリで列挙します。

①現場の実態と「数字」のズレ(ビジネス視点のチェック)

経理のデスクではなく、現場の動きを知っている強みを活かします。

期末の不自然な売上はないか

現場の営業活動の活気や出荷量に対して、帳簿上の売上だけが異常に伸びていないか。ノルマ達成のために、期末ギリギリに「押し込み販売」や「架空売上」が計上される兆候がないか。

在庫の「現物」は本当にあるか

データ上の在庫金額を信じるだけでなく、実際に自らの目で倉庫等の実地棚卸に立ち会っているか。長期間動いていない不良在庫が、帳簿上は定価のまま資産計上されていないか。

異常な経費の増減はないか

業績が苦しいはずなのに交際費や会議費が増えていないか。あるいは、実態のよくわからないコンサルタント費用等が急に発生していないか。 

②「属人化」と「不正」の排除(プロセスのチェック)

経理担当者のモラルに依存しない仕組みができているかを確認します。

現預金の管理と帳簿の記帳が分離されているか(職務分離)

  •  「銀行の振込操作(あるいは印鑑の管理)をする人」と、「会計ソフトに入力する人」が同じ人物になっていないか。これは不正の温床のトップです。

経理業務が「ブラックボックス化」していないか

  •  特定のベテラン経理社員に業務が集中し、他の誰も内容を把握できていない状態になっていないか。定期的なジョブローテーションや、連続した休暇の取得(不正発覚のきっかけになります)が行われているか。

社長の「鶴の一声」で経理が動いていないか

  • 経営トップによる内部統制の無視(経営者による無効化)がないか。正規の稟議や承認ルートを通さずに、トップダウンで支出されたものがないか。 

 ③監査法人の「上手な使い方」

 監査法人の監査が適正に行われているかを監視・連携するのも監査役の重要な仕事です。

監査法人が「会社に言いにくいこと」を抱えていないか

監査法人との定期ミーティングで、「経営陣の姿勢に懸念はないか」「経理部門からの資料提出が遅れていないか」など、彼らが現場で感じているリスクや不満をヒアリングできているか。

監査法人の独立性は保たれているか

会社(特にCFOや経理部長)と監査法人がなれ合いになっていないか。あるいは逆に、経営陣から「監査報酬の減額」などをチラつかされて不当なプレッシャーを与えられていないか。 

 ④資金の動き(会社の血液のチェック)

利益(会計)は操作できても、現金(資金繰り)は誤魔化せません。

実態不明な資金の流出はないか

関連会社や役員個人に対する貸付金・仮払金など、本業と直接関係のない不透明な資金移動がないか。


資金繰り表は適切に報告されているか

帳簿上で利益が出ていても、現金が回らなければ黒字倒産します。手元資金の推移と、将来の資金ショートのリスクを経営陣が正確に把握しているか。

 💡 監査役としての実務ポイント 

  •  非経理出身だからこそ、「専門的すぎてわからない」と経理部に丸投げするのではなく、「素人目線で見て、この数字(や取引)はどういうビジネス上の理由で発生したのですか?」と、社長や経理責任者に素朴な質問を投げ続けることが、最大の牽制になります。説明を濁したり、怒ったりする箇所にこそ、リスクが潜んでいます。


  • 現在、貴社の経理部門はどのような体制(人数や、業務の属人化の度合いなど)で運用されていますでしょうか? 

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