監査役の往査-2/2

6.内部監査人との連携

7.役員ヒアリング

8.一般社員にヒアリングする効用

9.【社長向け】社長の知らない「役員の嘘」を暴くのが、監査役のヒアリングです 。 


  • 常勤監査役にとって、本社から離れた現場の生々しい実態を掴む「往査(実地監査)」は、書類(運用実績)の裏側にある本質を見抜くための最大の武器です。


  • 本社の管理部門に上がってくる報告書は、いくらでも「綺麗に整形」できますが、現場の緩んだ空気や規程の無視は隠せません。上場審査(主幹事・東証)でも、監査役がどれだけ現場に足を運び、自浄作用を機能させているかは必ず厳しくチェックされます。

6.内部監査人との連携

  •  常勤監査役の往査に「内部監査人」との密接な連携、そして「会計監査人」を含めた三様監査(さんようかんさ)の視点を掛け合わせることで、地方拠点のガバナンスは鉄壁になります。 


  1.  【往査前】「網羅性」と「メリハリ」のすり合わせ(計画連携) 
  2.  【往査中】「マクロ(空気)」と「ミクロ(証憑)」のハイブリッド調査(実地連携) 
  3.  【往査後】「改善命令」を形骸化させないための挟み撃ち(フォローアップ連携)
  4. IPOをめざす社長へ
  5.  🔄 三様監査への広がり:会計監査人(監査法人)をどう巻き込むか? 

 ①監査役の「出張費」は、将来の不祥事を防ぐ「最安の保険」です。

  • 社長室に届く「地方拠点の報告書」は、すべて現地で綺麗にろ過された後のものです。業績の焦り、ルール無視、労務の悲鳴といった『生のリスク』は、本社のデスクに座っているだけでは絶対に分かりません。


  • 監査役が新幹線や飛行機に乗って地方拠点へ往査に行くのは、物見遊山ではなく、現地に埋まっている「上場延期の大地雷」を爆発前に掘り起こして撤去するためです。


  • 平時からプロの監査役が現場へ鋭い視線を向け、内部監査と連携して往査を繰り返すこと。これこそが、地方拠点発の不祥事で会社が空中分解するのを防ぐ、唯一無二のセーフティネットです

②内部監査と監査役が「バラバラ」な会社は、上場審査で二度手間に悩まされる。 

  • 上場準備フェーズにおいて、「監査役の監査」と「内部監査室の監査」がそれぞれ独立して、お互いに何をやっているか知らない状態(縦割り)を、上場審査の審査官は『非効率ガバナンス』として嫌います。


  • 限られたリソースの中で最短で上場を掴むためには、「内部監査が泥臭く数字の地雷を探し、監査役がその地雷の撤去命令を下す」という三様監査の連携が不可欠です。



  • 当社の内部監査アウトソーシングサービスでは、単にチェックリストを埋めるだけの監査は行いません。貴社の常勤監査役様と密に計画をすり合わせ、審査官が最も高く評価する「監査役×内部監査のハイブリッド連携による改善ストーリー」を、現場の往査を通じて泥臭く、確実に作り上げます

📌4.IPOをめざす社長へ

①監査役の「出張費」は、将来の不祥事を防ぐ「最安の保険」です。
②内部監査と監査役が「バラバラ」な会社は、上場審査で二度手間に悩まされる。

5. 🔄 三様監査への広がり:監査法人をどう巻き込むか? 

  •  往査で得た現場のリアルを、三様監査のもう一角である「会計監査人」へ適切にパスすることで、IPO直前の決算で「大どんでん返し(上場延期)」を喰らうリスクをゼロにします。 

三様監査への広がり

常勤監査役

⇙⇩⇘

経営の牽制 

ガバナンスの共有

三様監査への広がり

内部監査人


 監査法人

三様監査への広がり

(数字・金額・運用の検証)

 三様監査への広がり

①「実地棚卸」での三者連携
②「KAM(監査上の主要な検討事項)」の芽を先摘みする

 ①「実地棚卸」での三者連携

  • 期末の在庫一斉棚卸の際、営業所へ「内部監査人(または監査役)」と「会計監査人」が同時に立ち会うケースをセットします。監査法人が「この拠点の在庫管理、少し怪しいですね」と漏らした懸念を監査役がキャッチし、翌期の内部監査の重点項目へ即座にフィードバックします。

②「KAM(監査上の主要な検討事項)」の芽を先摘みする

  • 地方拠点発の架空売上や不適切会計は、監査法人が最も警戒するポイントです。定期的な三様監査ミーティングの場で、監査役から「先月、内部監査人と〇〇支店を往査し、売上プロセスの脆弱性を発見したため、すでにシステム上でこのように是正(改善実績)させました」と先手を打って報告します。これにより、監査法人は「この会社は自浄作用が極めて高い」と安心し、上場審査に向けた強固な味方になってくれます。

6.役員ヒアリング

  •  常勤監査役の監査において、現場に赴く「往査」と対をなす最重要プロセスが、部門トップや管掌役員に対する「役員ヒアリング(業務執行状況の聴取)」です。


  • 往査が現場の「実態(ミクロ)」を見るものだとすれば、役員ヒアリングはその部門を統括するトップの「認識(マクロ)」を確認する作業です。「役員の頭の中」と「往査で見えた現場のリアル」の間にズレがないか(答え合わせ)をすることが、このヒアリングの最大の目的となります。


  • 審査でも必ず突っ込まれる、役員ヒアリングの3大論点と実務の仕掛けを整理しました。 


1.経営リスクの自己認識と「バッドニュース」の報告姿勢 
2.往査結果との「答え合わせ(認識のギャップ検証)」 
3.コンプライアンスと部門間連携 

1.経営リスクの自己認識と「バッドニュース」の報告姿勢

  • 常勤監査役の監査において、現場に赴く「往査」と対をなす最重要プロセスが、部門トップや管掌役員に対する「役員ヒアリング(業務執行状況の聴取)」です。


  • 往査が現場の「実態(ミクロ)」を見るものだとすれば、役員ヒアリングはその部門を統括するトップの「認識(マクロ)」を確認する作業です。「役員の頭の中」と「往査で見えた現場のリアル」の間にズレがないか(答え合わせ)をすることが、このヒアリングの最大の目的となります。


  • 審査でも必ず突っ込まれる、役員ヒアリングの3大論点と実務の仕掛けを整理しました。 


1.経営リスクの自己認識と「バッドニュース」の報告姿勢 
2.往査結果との「答え合わせ(認識のギャップ検証)」 
3.コンプライアンスと「部門間連携」 

1.経営リスクの自己認識と「バッドニュース」の報告姿勢 

  • 担当部門が抱えるリスクを、役員自身が「自分事」として解像度高く把握しているかを確認します。

①ヒアリングの視点

  • 「現在、管掌部門で最も懸念しているリスクは何ですか?」とストレートに問います。

②実務の仕掛け

  • ここで「特に問題ありません」「現場に任せています」と答える役員は、現場のウミ(不正の芽)を全く把握できていない証拠です。また、重大なトラブル(バッドニュース)が起きた際、社長や監査役に隠さず即座にエスカレーションする報告ルートが機能しているかを厳しく問いただします

 2.往査結果との「答え合わせ(認識のギャップ検証)」 

  • 監査役が往査で見つけてきた「現場のレッドフラグ」を役員にぶつけ、トップの認識と現場の実態に乖離(かいり)がないかを確認します。

①ヒアリングの視点

  •  「先日〇〇支店へ往査した際、隠れ残業が常態化している空気を感じましたが、役員としてはどう認識していますか?」と具体的な事象を提示します。

②実務の仕掛け

  • 役員が「そんなはずはない、システム上は退勤している」と書類上の運用実績だけを盾にしてきたら危険信号です。現場が役員に忖度(そんたく)して虚偽の報告を上げている「情報遮断の壁」が存在していることを暴き出します。

3.コンプライアンスと部門間連携

  • 自部門の利益や売上だけを追求し、管理部門(法務や経理)の牽制を無視する「独裁的な役員」になっていないかを確認します。

①ヒアリングの視点

  • 新規取引やイレギュラーな契約を進める際、法務部や経理部とどのようなフローで連携し、承認を得ているかを確認します。


②実務の仕掛け

  • 業績が絶好調な花形部門の役員ほど、「管理部門は動きが遅いから事後報告でいい」とルールを軽視しがちです。この「サイロ化(縦割り)」による暴走を牽制し、全社的なガバナンスの枠内に引き戻すのが監査役の役割です

 【判定表】上場審査で評価される役員・評価されない役員 

【ヒアリングのテーマ】 


リスクの把握



バッドニュース


現場との距離感

【❌ リスクのある役員】 


  • 「現場の責任者に任せているので問題ない」


  • 部内で揉み消し、解決してから社長へ事後報告する


  • 往査で見つかった現場の規程違反を全く知らない 

【⭕ ガバナンスが効いている役員】 

  • 「現在〇〇の領域にリスクがあり、こう対策している」


  • 発生した瞬間に未解決のまま速報として共有する


  •  現場の脆弱性を自ら指摘し、監査役に相談してくる 

8.一般社員にヒアリングする効用

  • 常勤監査役が支店、工場、あるいは子会社などへ往査(実地監査)を行う際、拠点長(支店長や工場長)だけでなく「一般社員」からヒアリングを行うことには、極めて大きな効用があり、実務上も非常に高い必要性があります。


  • 特にIPO準備企業や上場企業において、経営陣や拠点長からの報告だけでは見えないリスクを把握するため、一般社員との対話は常勤監査役の重要な武器となります。


具体的な効用と必要性について、以下の通り整理します。


  1. 一般社員からヒアリングする「効用」
  2. 一般社員へのヒアリングの「必要性」
  3. 【実務上のポイント】効果的なヒアリングを行うために

8➀一般社員にヒアリングする効用

① フィルターのかかっていない「生の声(現場の実態)」の把握

  •  経営陣や拠点長からの報告は、無意識であれ意図的であれ、「自部門を良く見せよう」というバイアスやフィルターがかかりがちです。一般社員に直接ヒアリングすることで、稟議書や月次報告書といった「書面」には表れない、現場のリアルな課題やボトルネック(人員不足、無理なノルマ、システムの使い勝手の悪さなど)を抽出できます。


② 組織風土とコンプライアンス意識の「体感」
 

  • 内部統制の基盤となる「組織風土」は、書類監査では測れません。一般社員と会話する際の態度、表情、職場の雰囲気(活気があるか、疲弊しているか、上司の顔色をうかがっていないか)を直接観察することで、不正やハラスメントの温床となる「風通しの悪さ」を早期に察知できます。


③ 内部通報の補完(潜在的なリスクの早期発見)
 

  • 内部通報制度があっても、報復を恐れて声を上げられない社員は多くいます。監査役が直接足を運び、雑談を交えながら傾聴する姿勢を見せることで、「実は…」と残業代の未払い、パワハラ、経費の不正処理などの端緒となる情報がポロリと引き出されることが多々あります。


④ 牽制効果(プレゼンスの向上)
 

  • 監査役が定期的に現場に現れ、一般社員にも声をかけているという事実そのものが、「会社(監査役)は現場をしっかり見ている」という強力なメッセージとなり、現場における不正の抑止力(牽制効果)に繋がります。

8②一般社員へのヒアリングの「必要性」 

① 「ルールの形骸化」の検証

  •  IPO審査でも重要視される「内部統制」は、ルールが「存在する」こと以上に「運用されている」ことが問われます。例えば、「稟議規程」が存在していても、一般社員へのヒアリングで「実は事後稟議が横行している」「上司に言われて日付を改ざんして申請している」といった運用上の欠陥(形骸化)を発見するためには、現場の末端への確認が不可欠です。


② 情報の非対称性の解消

  •  常勤監査役は社内に常駐しているとはいえ、本社部門(管理部門)の情報に偏りがちです。現場と本社の間にある情報の非対称性を自ら足を動かして埋めに行かなければ、「経営層の決定が現場に正しく伝わっているか」「現場のリスクが経営層に正しく上がっているか」を監査することはできません。

8③【実務上のポイント】効果的なヒアリングを行うために

  • 一般社員へのヒアリングを意味のあるものにするため、監査役実務では以下の工夫が求められます。


【人選を現場トップに任せきりにしない】

  •  拠点長が選んだ「優秀で不満のない社員」だけと面談しても意味がありません。ランダムに選んだり、入社1〜3年目の若手や中途入社者など、異なる視点を持つ層を意図的に指名したりすることが有効です。


【「監査(尋問)」ではなく「対話」を心がける】

  •  一般社員にとって監査役は雲の上の存在であり、緊張します。「今困っていることはない?」「本社への要望はある?」といった支援的なアプローチ(サポート監査の姿勢)で心を開かせることが重要です。


【情報源の絶対的な秘匿】

  • ヒアリングで得たネガティブな情報を拠点長や人事にフィードバックする際、「誰が言ったか」が特定されると監査役への信頼は一瞬で崩壊します。情報は抽象化・一般化して扱うという信頼関係の構築が前提となります。


【結論】

  • 拠点長クラスのヒアリングが「組織の建前とマネジメント状況」を確認するものであるのに対し、一般社員へのヒアリングは「組織の本音と内部統制の実際の浸透度」を確認するためのものであり、監査役監査において必要不可欠なプロセスと言えます。

 9.🧐 【社長向け】社長の知らない「役員の嘘」を暴くのが、監査役のヒアリングです 。

  • 上場準備が進むにつれ、会社が大きくなればなるほど、社長の目には「各部門の役員が上げてくる綺麗な報告書」しか入らなくなります。しかし、問題なのは、役員が売上目標のために現場に無理をさせ、都合の悪い情報を社長に隠す「裸の王様状態」です。


  • 常勤監査役が行う「役員ヒアリング」は、単なる雑談やご機嫌伺いではありません。 監査役が現場の「往査」で泥臭く拾い上げた一次情報(現場のリアル)を、役員の報告(マクロ)とぶつけ合わせ、そこに潜む『嘘や認識のズレ』をあぶり出す、極めて高度な経営牽制プロセスです。


  • 役員の独走を許さず、全社を一枚岩のガバナンスで統制すること。これこそが、上場直前の空中分解を防ぐセーフティネットなのです。

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