IPOにおける証券会社の7つの関係部門 

1.法人部/企業部

(1)🔄 「企業部」と「公開引受部」の役割分担
(2)💡【社長向け】優秀な「企業部」の担当者を味方にできるかで、IPOのスピードは変わる
2.公開引受部(コーポレート・ファイナンス部 / IPOソリューション部)

3.審査部(公開審査部 / 企業審査部)

4.ECM部(エクイティ・キャピタル・マーケット部/資本市場部)

5.リサーチ部(企業調査部 / アナリスト)

6.機関投資家営業部(ホールセール部 / 外国法人営業部)

7.リテール営業部(個人顧客部門 / 支店営業部)

1.法人部/企業部

  • 法人部/企業部はIPO業務の「すべての始まりの窓口」であり、未上場企業と証券会社を繋ぐリレーション(関係維持)の要として、極めて重要な存在意義を持っています。


  • 法人部/企業部は「案件を引っ張ってきて、上場後も一貫して会社を支える営業フロント」で

 

【IPOにおける「企業部(法人部)」の3大存在意義】

  • 企業部は、主に地域ごと、あるいは業界ごとに担当が分かれており、未上場企業に対して最も早くからアプローチを開始する部隊です。


① 「主幹事の座」を勝ち取るための最初の営業フロント
② 実務部隊(公開引受部)を動かす「社内ロビイスト」
③ 上場後も会社を支え続ける「一生涯の窓口」

① 「主幹事の座」を勝ち取るための最初の営業フロント

  • まだ上場など現実味がないフェーズ(N-4期やそれ以前)から、社長のもとへ日参し、信頼関係を築くのが企業部です。


  • 他社との激しい主幹事コンペの際、会社のニーズを汲み取り、「当社の公開引受部やリサーチ部を総動員して、御社の上場を全力でサポートします!」と熱い提案(ピッチ)を行う、いわば「IPOディールのプロデューサー」です。

② 実務部隊(公開引受部)を動かす「社内ロビイスト」

  • 主幹事契約(MOUなど)を結んだ後、実際の規程作りや書類作成(エグゼキューション)は「公開引受部」へバトンタッチされますが、企業部の仕事がそこで終わるわけではありません。


  • もし公開引受部のマンパワーが足りず、自社への対応が後回しになりそうな時、企業部の担当者が「あのお客さんは将来の大物だから、エース級の引受部員をアサインしてくれ!」と、証券会社内部で動いてくれる強力な味方(社内ロビイスト)になります。

③ 上場後も会社を支え続ける「一生涯の窓口」

  • 公開引受部や審査部は、上場日が来れば「一丁上がり」で担当を外れます。しかし、企業部は上場後もずっと会社の担当窓口であり続けます。


  • 上場後の公募増資(PO)による資金調達、M&Aのアドバイザリー、自社株買いの執行、さらには創業社長の資産管理(プライベート・バンキング)まで、企業の成長ステージに合わせたすべての金融ソリューションを繋ぐ総合窓口となります。

(1)🔄 「企業部」と「公開引受部」の役割分担





 【 本質的な役割】

  

主な任務】

 

会社との距離感】

  

付き合う期間】

  🏢 企業部(法人部)

営業・リレーション(関係構築)


主幹事契約の獲得、上場後の法人取引 


 社長の良き相談相手、ビジネスパートナー 

 上場前から、上場後も半永久的

  📝 公開引受部  


上場指導


申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)作成、ガバナンス構築 


 規程や数字の不備を容赦なく指摘する「指導官」

 主に上場準備期間中のみ 

 (2) 💡 【社長向け】優秀な「企業部」の担当者を味方にできるかで、IPOのスピードは変わる 

  • 主幹事証券を選定する際、多くの社長は「公開引受部にどんな優秀な人が来るか」ばかりを気にします。しかし、実務を回す引受部と同じくらい重要なのが、営業窓口である「企業部(法人部)」の担当者の熱量です。


  • 引受部は常に複数のIPO案件を抱えて激務を極めています。そこで会社側が「ちょっとスケジュールが遅れそうだ」「トラブルが起きた」という危機に直面したとき、証券会社の中で誰よりも早く動き、引受部やアナリスト、ECM部を社内調整して自社のためにリソースを割かせてくれるのが企業部です。


  • 企業部を「単なる営業マン」と侮るなかれ。彼らを自社の熱狂的なファンにすることこそが、証券会社という巨大組織をフル活用するための、IPO成功の隠れた大原則です。

2.公開引受部(コーポレート・ファイナンス部 / IPOソリューション部)

【役割】

  •  IPO準備企業の「二人三脚のパートナー」


  • キックオフから上場日まで、最も長く、最も濃密に付き合う部門です。


  • 資本政策の立案、各種規程の整備、J-SOX(内部統制)の構築、申請書類(「Ⅰの部」「Ⅱの部」または各種説明書)の作成などを、企業の隣で徹底的に「指導・アドバイス」してくれます。

 3.審査部(公開審査部 / 企業審査部)

【役割】

  •  証券会社内部の「厳格な裁判官」


  • 公開引受部とはチャイニーズウォール(情報隔壁)で完全に遮断された、独立した部門です。


  • 引受部が「この会社は上場できる状態になりました」と太鼓判を押した企業に対し、「本当に東証に推薦して大丈夫か」を第三者の冷徹な目で厳しくチェック(引受審査)します。先述した「監査役ヒアリング」を行うのも、主にこの部門の審査官です。

4.  ECM部(エクイティ・キャピタル・マーケット部) 

【役割】 

  • 株の値決めと売り出し規模をコントロールする「司令塔」


  • 発行体(IPO企業)と、株を買う投資家の間に立ち、ディール(取引)の構造を設計します。


  • 現在の株式市場のトレンドや、他社のIPO動向を見極めながら、「今回のIPOで株を何万株、いくら位で売り出すか(オファリングサイズ)」の戦略を練るマーケットのプロフェッショナルです。

🔄 公開引受部・審査部・ ECM部 / リサーチ部 / 営業部 の比較 

【フェーズ】

 

 直前々期(N-2期)〜直前期(N-1期) 


  

 申請期(N期)前半 






 申請期(N期)後半〜上場日

 【メインとなる部門】


📝 公開引受部




⚖️ 審査部  






 📈 ECM部 / リサーチ部 / 営業部

 【企業側が意識すべきポイント】


 課題を隠さず引受部と共有し、ガバナンスや規程のウミを出し切る。 


審査部からの質問波状攻撃に対し、監査役やCFOが「実効的な自浄作用」をエビデンス(議事録)を交えて回答する。 


ロードショー(投資家面談)などを通じて、市場に「自社の成長ストーリー」をアピールし、高い株価を目指す。 

 5.リサーチ部(企業調査部 / アナリスト) 

【役割】

  •  企業のビジネスモデルを分析し、市場に伝える「目利き」


  • 業種ごとの専門アナリストが、IPO準備企業のビジネスモデル、競争優位性、将来の業績予測などを徹底的に分析します。


  • 上場直前に、機関投資家向けに企業価値を客観的に評価した「アナリストレポート」を作成し、適正な株価(公開価格)が形成されるための土台を作ります。

 6.機関投資家営業部(ホールセール部 / 外国法人営業部) 

【役割】 

  • 国内外の「プロの投資家」に株を売り込む部隊


  • 国内外の生命保険会社、投資信託(アセットマネジメント)、海外のヘッジファンドなどの「機関投資家」に対して、自社の株式を買ってもらうよう営業をかけます。


  • IPOの成否、特に対上場後の株価の安定は、この大口投資家をどれだけ巻き込めるかにかかっています

7.リテール営業部(個人顧客部門 / 支店営業部)

【役割】

  •  全国の「個人投資家」に株を届ける販売部隊


  • 証券会社の全国の支店やネットを通じて、一般の個人投資家に「今度上場する〇〇という素晴らしい会社がありますよ」とIPO株を販売・配分する部隊です。


  • 認知度向上や、上場後のファン(個人株主)を増やすために重要な役割を担います。

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