常勤監査役の主幹事対応(詳細)

【前提】なぜ引受部は監査役にヒアリングするのか 

  • 主幹事証券の引受部は、上場申請企業の「ガバナンスが実質的に機能しているか」を確認する義務があります。監査役は取締役から独立した立場でその機能を担っているため、「監査役が形式だけでなく実態として機能しているか」を確認することがヒアリングの核心です。 


  • 「社長や経理部長に聞けば分かること」を監査役にあえて聞くのは、三者の回答が一致しているかどうかを確認する意味もあります。

 

  • 証券会社がここで見極めようとしているのは、マニュアル通りの知識ではなく、「この監査役は、創業者社長が暴走したときに本当に体を張って止められる『会社の安全弁』なのか、それともただの『お飾り(名貸し)』なのか」という一点です。

常勤監査役の主幹事対応

 主要論点

1.【8つの論点】

論点①:監査役としての独立性・就任経緯

論点②:監査活動の実態 
論点③:三様監査の連携 
論点④:内部統制の整備・運用状況の把握
論点⑤:取締役会の実効性
論点⑥:関連当事者取引 
論点⑦:不正・コンプライアンスリスクへの対応
論点⑧:監査役自身の専門性・知識

 2.ヒアリング本番に向けた3つの準備

論点①:監査役としての独立性・就任経緯

①社長・代表者とどのような関係で就任したか

②就任前に会社・オーナーとの取引・雇用関係はなかったか

③独立性を損なう関係(血縁・主要取引先・大株主等)がないか

④就任時に監査役としての権限・独立性について社長と合意したか

【ポイント】

  • 「社長の知人だから」という就任経緯自体はよくありますが、そこから「本当に独立した監査ができているか」を深掘りされます。 

 論点②:監査活動の実態

①監査計画書はあるか。誰が作成し、どのように策定したか

②年間を通じてどの部門・領域を監査したか

③監査調書は作成しているか。どのような内容か

④取締役会には毎回出席しているか。欠席した場合の理由は何か

⑤監査役として発言した具体的な事例はあるか

【ポイント】

  • 「毎月取締役会に出ています」だけでは不十分で、「どんな意見を述べたか」「そのやりとりが議事録に残っているか」まで確認されます。

論点③:三様監査の連携 

①監査法人との定期連携の頻度・内容はどうか

②監査法人から受け取った指摘事項を把握しているか

③内部監査の実施状況・結果を定期的に受け取っているか

④三者の連携に関する記録(議事録・メモ)は残っているか

【ポイント】

  • 「連携しています」という回答だけでは通じません。「いつ・誰と・何を話したか」を具体的に説明できるかどうかが問われます。記録のない連携は「形骸化している」と判断される可能性があります。

 論点④:内部統制の整備・運用状況の把握

①主要な業務プロセスの文書化(フロー・業務記述書)の整備状況を把握しているか

②内部統制の整備状況に問題があると感じる領域はどこか

③過去の監査で発見した重要な指摘事項は何か

④その指摘事項はどのように改善されたか

【ポイント】

  • 監査役が自社の内部統制の「現在地」を具体的に語れるかどうかが問われます。「よく分からない」「担当部門に任せている」という回答は審査上マイナスです。

論点⑤:取締役会の実効性

①取締役会の議論は実質的に行われているか

②重要な意思決定が事前の根回しだけで終わっており、取締役会が形骸化していないか

③否決・継続審議・条件付き承認などの事例はあったか

④監査役として取締役会に意見・異議を述べたことはあるか

【ポイント】

  • 引受部は「取締役会が機能しているかどうか」を確認するために、社長ではなく監査役に聞きます。監査役の答えと議事録の内容が一致しているかも確認されます。

論点⑥:関連当事者取引 

①オーナー・代表者・その親族との取引はあるか

②そのような取引について監査役として確認・意見を述べたか

③関連当事者取引の解消・適正化の状況はどうか

④解消が難しい取引については、第三者性の確保(独立した条件での取引等)をどう担保しているか

【ポイント】

  • 関連当事者取引はIPO審査でも最重視される領域の一つです。監査役が「把握していない」「社長に任せている」という状況は審査上の重大なリスクになります。

論点⑦:不正・コンプライアンスリスクへの対応

①内部通報制度の整備・運用状況を把握しているか

②過去に不正・コンプライアンス違反の事案はあったか

③あった場合、監査役としてどのように関与したか

④監査役として「このリスクが一番心配」と感じる領域はどこか

【ポイント】

有事の対応履歴があれば、それをどう監査役として処理したかを具体的に説明できると評価が高まります。「何もなかった」という回答が続く場合、引受部は「本当に監査しているのか」という疑念を持つことがあります。

 論点⑧:監査役自身の専門性・知識

①財務・会計の知識はあるか(特に非経理出身の場合)

②IPO審査・上場後のガバナンスに関する知識をどこで習得したか

③監査役協会の研修・セミナーへの参加状況はどうか

【ポイント】

  • 専門資格(公認会計士・弁護士等)がない場合でも、「自分の知識の不足をどう補っているか」を説明できれば問題にはなりません。

 2.ヒアリング本番に向けた3つの準備

①記録を手元に揃えておく  

②「具体的な事例」を用意しておく  

③社長・CFOの回答と一致させておく

①記録を手元に揃えておく

  •  監査計画書・監査調書・取締役会出席記録・三様監査の連携記録を体系的にファイリングし、質問に対して即座に「この書類です」と示せる状態にしておくこと。

②「具体的な事例」を用意しておく

②「具体的な事例」を用意しておく

  •  「監査役として意見を述べた事例」「発見した指摘事項とその改善の経緯」など、抽象論ではなく具体的なエピソードとして説明できるよう準備すること。 

 ③社長・CFOの回答と一致させておく

  •  引受部は社長・経理部門にも同じ論点で質問します。回答がズレると「ガバナンスが機能していない」と見なされます。事前にすり合わせしておくことが重要です(ただし「回答を合わせる」ことが目的ではなく「実態が一致していることを確認する」ことが目的です)。 

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