AIで監査役調書を作成するには

手引き&プロンプト実例集
〜明日から使える、AIとの仕事の分け方〜

【ご利用にあたっての注意事項】

  1. 本ガイドで示すプロンプト例はあくまでも参考例です。
  2. AIの出力は必ず監査役自身が確認・修正してください。
  3. AIへの入力に、個人名・会社名・具体的な金額・機密情報を入れないことを原則としてください。
  4. 利用するAIサービスの利用規約・情報セキュリティポリシーを必ずご確認ください。
  5. 発見事項の重要度判断・監査意見の形成は、必ず監査役自身が行ってください。


【目次】
 

  1. AIを使う前に知っておくこと
  2. 往査前の準備にAIを使う
  3. 往査時の調書作成にAIを使う
  4. 特殊な場面でのAI活用
  5. AIワークフローの全体設計

1-1.AIを使う前に知っておくこと

【✅ AIに任せてよい部分】

  1. 調書の構成(骨格)の作成
  2. 確認した事実の整理と整形
  3. 発見事項の標準フォーマットへの整形
  4. 往査前のリスク・チェックリスト作成
  5. 議事録・連絡記録の下書き
  6. 文章表現の統一・整理
  7. 会計基準・法令の概要確認(要出典確認)


【❌ 人間(監査役)がやるべき部分】

  1. 発見事項の「重要度」の最終判断
  2. ヒアリングの「温度感」「反応」の記録
  3. 「これは問題か」という評価・判断
  4. 機密情報・個人名・金額の入力
  5. 内部通報内容の入力
  6. 辞任・法的措置等の重大判断
  7. 監査意見・監査報告書の作成


 

※ AIの出力は「下書き」です。「完成品」として調書に使うことはしないでください。

1-2 セキュリティの基本ルール

  1. 個人名・会社名・取引先名をAIへの入力に含めない  
  2. 具体的な金額・口座番号・契約金額を含めない
  3.  内部通報の内容・センシティブな人事情報を含めない
  4.  利用するAIサービスの利用規約(入力情報の学習利用の有無等)を事前に確認する 
  5. 会社のIT部門・情報セキュリティポリシーに従って利用する(会社が承認したサービスを使う)

【具体的な情報の「匿名化」の方法】

【情報の種類】

会社名

担当者名

金額


部門・担当者

【実際の情報】入力不可

株式会社●●商事

取締役Lの義弟、山田次郎

毎月60万円、三カ月で180万円


経理担当のYさん(入社4年目)

【匿名化した表現)入力可

事業会社(取引先)

 役員の近親者が代表を務める会社 

 毎月数十万円規模の定額支払が3ヶ月継続 

経理担当者(若手)へのヒアリング

2-1. 往査前の準備にAIを使う

【目的】

往査対象部門でどのようなリスクが起きやすいかをAIに整理してもらい、往査のチェックリストを作成する。

【プロンプト例①:往査前チェックリストの生成(購買部門)】

【役割設定】

あなたは内部監査と監査役業務の専門家です。以下の条件で、往査前のリスク確認とチェックリストを作成してください。

【会社の概要(匿名化)】

業種:ITサービス系・社員数:100〜150名規模・上場準備中(東証グロース市場)

【往査対象部門】
購買部門(担当者2〜3名、特定の取引先への依存度が高い)

【依頼内容】

①この部門でIPO準備中に特に問題になりやすいリスクを5点以内で列挙する
②往査で確認すべきチェックポイントを10点以内で、確認手続き(閲覧/質問/突合等)と合わせて列挙する
③特に注意すべき職務分離の観点を2〜3点示す

【出力形式】

番号付きリスト形式・専門用語は使っても良いが、実務で使える具体的な表現で

【出力の確認ポイント】

・チェックポイントのうち、自分が事前に考えていなかった項目をマーカーで印をつける

・この会社固有の状況(担当者数・業界特性等)と照らして、不要な項目は削除する

・自分の経験から加えるべき項目があれば追記する

2-2 規程・基準との照合チェック

【プロンプト例②:関連法令・基準の概要確認】

以下の往査テーマに関連する法令・会計基準・ガイドラインを整理してください。

【往査テーマ】

人材派遣事業を行っている会社の、人材派遣に関する許認可管理の往査

【確認したいこと】

①派遣業の許認可に関して確認すべき主な法的要件(労働者派遣法の観点)
②IPO審査で特に指摘されやすい許認可管理の問題点
③往査で確認すべき書類の種類

【注意】

一般的な法令の概要として整理してください。個別の法的判断は弁護士に確認します。

※ AIの出力は概要として参考にしてください。最終確認は必ず専門家(弁護士・社労士等)に行ってください。

3-1.往査後の調書作成にAIを使う

【基本的な往査記録の調書化】

【重要】
往査で確認した内容をテキストで整理し、調書の下書きを生成してもらいます。
 

【プロンプト例③:往査記録から調書の骨格を生成する(基本形)】

【役割設定】

あなたは監査役の業務アシスタントです。以下の往査記録をもとに、監査調書の下書きを作成してください。

【往査の概要(匿名化済み)】

往査対象:営業部門・実施日:直近の火曜日・実施した手続き:閲覧、ヒアリング

【確認した事実(事実のみ。判断・評価は含めない)】

①売上明細を閲覧した。月末に売上計上が集中するパターンが確認された②担当者へのヒアリングで、検収書の受領前に売上計上している案件が 複数あることが確認された
③契約書の管理台帳を閲覧した。3件について契約書の原本が見当たらなかった

【気になった点(補足)】

  1. 検収書なしの売上計上について、担当者は『慣行として行ってきた』と説明した
  2. 契約書3件の欠損について、担当者は原因を把握していなかった


【出力形式の指定】

以下の構成で調書の下書きを作成してください
1. 確認した事実(手続き別。事実のみ。判断・評価は含めない)
2. 追加確認が必要な事項(番号付きリスト)
3. 発見事項(重要度:高・中・低 を付記。ただし重要度は仮の評価として記載)
4. 改善提案(1〜3点)

文体】:ですます調。

注意:AIによる判断・評価は仮の評価として括弧書きで示し、      最終判断は監査役が行うことを明記すること。



【出力を受け取った後の必須作業】

確認1 「確認した事実」の記載が、実際の往査内容と一致しているか確認する
確認2 「発見事項の重要度」をAIの仮評価から、自分の判断で更新する
確認3 ヒアリングで得た「温度感」「担当者の反応」を加筆する
確認4 「改善提案」が一般論になっていないか確認し、この会社に合った具体的な提案に修正する
確認5  会社名・個人名・金額等の機密情報が出力に含まれていないか確認する 

3-2.発見事項の「標準フォーマット」への整形

【重要】往査で確認した内容をテキストで整理し、調書の下書きを生成してもらいます。
 

【プロンプト例③:往査記録から調書の骨格を生成する(基本形)】

【役割設定】

あなたは監査役の業務アシスタントです。以下の往査記録をもとに、監査調書の下書きを作成してください。

【往査の概要(匿名化済み)】

【往査対象】

営業部門・実施日:直近の火曜日・実施した手続き:閲覧、ヒアリング

【確認した事実(事実のみ。判断・評価は含めない)】

①売上明細を閲覧した。月末に売上計上が集中するパターンが確認された②担当者へのヒアリングで、検収書の受領前に売上計上している案件が 複数あることが確認された
③契約書の管理台帳を閲覧した。3件について契約書の原本が見当たらなかった

【気になった点(補足)】

検収書なしの売上計上について、担当者は『慣行として行ってきた』と説明し契約書3件の欠損について、担当者は原因を把握していなかった

【出力形式の指定】

以下の構成で調書の下書きを作成してください

1. 確認した事実(手続き別。事実のみ。判断・評価は含めない)
2. 追加確認が必要な事項(番号付きリスト)
3. 発見事項(重要度:高・中・低 を付記。ただし重要度は仮の評価として記載)
4. 改善提案(1〜3点)

【文体】
ですます調。

【注意】
AIによる判断・評価は仮の評価として括弧書きで示し、最終判断は監査役が行うことを明記すること。



【出力を受け取った後の必須作業】

確認1 「確認した事実」の記載が、実際の往査内容と一致しているか確認する
確認2  「発見事項の重要度」をAIの仮評価から、自分の判断で更新する
確認3 ヒアリングで得た「温度感」「担当者の反応」を加筆する
確認4 「改善提案」が一般論になっていないか確認し、この会社に合った具体的な提案に修正する
確認5 会社名・個人名・金額等の機密情報が出力に含まれていないか確認する 

3-3 複数の発見事項を「重要度順」に整理する

複数の発見事項が出た往査後に、優先順位を整理するためのプロンプトです。

 

【プロンプト例⑤:複数の発見事項を重要度順に整理する】

以下の発見事項を、監査上の重要度の観点から整理してください。

【発見事項一覧(箇条書き)】

  1. 契約書の有効期限が切れているものが複数ある
  2. 社内規程の改訂に担当役員の承認記録がない案件が1件ある
  3. 棚卸し記録と実物の照合が未実施
  4. 特定の外注先への発注が集中し、相見積りが取得されていない
  5. 経費精算に領収書の原本がなく、コピーで処理されている案件が2件ある


【整理の観点】

  1. 上場審査(コーポレートガバナンス・内部管理体制)への影響の大きさ
  2. 法令違反リスクの有無・再発の可能性


【出力形式】

①重要度別(高・中・低)に分類する
②各発見事項に「重要と判断した理由(仮の評価)」を付記する
③最も早急に対応が必要な発見事項を1つ選び、理由を示す

【注意】

これは参考評価です。最終的な重要度判断は監査役が行います。


4-1.特殊な場面でのAI活用 

【4-1 不審な取引を発見した場面】
 

往査中に不審な取引を発見した場合、「追加確認のロードマップ」を作るためにAIを活用できます。


※ この場面では特に「機密情報を入れない」ことが重要です。具体的な社名・金額・氏名は絶対に入力しないでください。


  

【プロンプト例⑥:不審な取引発見後の「追加確認事項」のロードマップ作成】

【役割設定】
あなたは内部監査・監査役業務の専門家です。

【状況(匿名化済み)

管理部門の往査中に、以下の特徴を持つ取引を発見しました。

  1. 特定の外部業者への定額支払いが複数ヶ月継続している
  2. 支払い承認が特定の役員1名のみで行われている(社長決裁なし)
  3. 経理担当者はこの取引の詳細を把握していない
  4. 業務委託の内容が曖昧で、成果物の記録がない・当該業者の設立から間もない(2〜3年以内)


【依頼内容】

①この状況で「追加確認すべき事項」を優先順位順に10点以内で列挙してください
②確認にあたって注意すべき点(証拠隠滅を防ぐための行動順序等)を示してください
③外部専門家(弁護士・監査法人)に相談するタイミングの目安を示してください

【注意】

これは一般的なガイドラインとして活用します。      個別の法的判断は専門家に相談します。 

4-2 ヒアリング記録を調書化する場面

  • 口頭でのヒアリング内容をメモから整理し、調書の「ヒアリング記録」として整形するプロンプトです。


【プロンプト例⑦:ヒアリングメモを調書形式に整理する】

【役割設定】

あなたは監査役の業務アシスタントです。

ヒアリングメモ(口語体・整理前)】

経理担当者へのヒアリング。
契約書の件を聞いた。3件が見つからないと言っていた。
理由は引き継ぎのときに前任者が持ち出したかもしれないと。確認中とのこと。
台帳はあるけど原本の保管場所が決まっていないらしい。社長には報告していないと言っていた。

【整理してほしい形式】

以下のフォーマットでヒアリング記録として整形してください

【実施日時】(空白のまま残してください)
【ヒアリング対象】(「経理部門の担当者」という表現で)
【ヒアリング方法】口頭(任意)

Q:(監査役の質問)A:(担当者の回答の要旨)
という形式でQ&Aを整理してください。

【注意】

  1. 個人名は「担当者」「ヒアリング対象者」という表現に置き換えてください
  2. ・事実と意見(「〜かもしれない」「〜らしい」)を区別して記載してください
  3. ・確認中の事項は「確認中」と明記してください

4-3 三様監査の連携記録を作成する場面

監査役・監査法人・内部監査の三様監査連携会合の議事録を効率的に作成します。
 

【プロンプト例⑧:三様監査連携会合の議事録下書きを作成する】

【役割設定】

あなたは監査役の業務アシスタントです。以下のメモをもとに、三様監査連携会合の議事録の下書きを作成してください。

【会合の概要】

参加者:常勤監査役、監査法人担当者、内部監査担当者の3者

【場所】社外(会社名等は含めない)

【時間】約2時間

会合で共有された主なトピック】

①前回会合の指摘事項のフォローアップ
3件中2件が改善完了、1件は継続対応中

②監査役からの報告
購買部門の往査で外注先の集中発注を発見。詳細を共有した

③監査法人からの報告
第3四半期の四半期レビューで売上計上基準について確認が必要  な案件が複数あると共有された

④内部監査からの報告
IT部門のアクセス権限管理に問題を発見。改善提案を提出済み

⑤次回の重点確認事項
人事部門(給与計算の正確性)を三者で重点確認する方針を合意

【出力形式】

  1. 議事録として整形(開催日・参加者・議題・内容・決定事項)
  2. 会社名・個人名・金額は使わない(「監査役」「監査法人担当者」等の役割で表記)
  3. 事実の記録として書く(評価・判断は含めない)

5.「入力の型」汎用テンプレート

  • AIへの入力を安定させるための汎用テンプレートです。

コピー&ペーストして使用してください。
 

【汎用テンプレート】
【往査後の調書作成用(コピー&ペーストして使用)】

【役割設定】

あなたは内部監査・監査役業務の専門家です。以下の往査記録をもとに監査調書の下書きを作成してください。

【往査の概要】
【往査対象部門】

(例:購買部門、営業部門、管理部門等)

【実施した手続き】
(例:閲覧、質問、再実施、突合等)

【確認した主な資料】
(例:支払明細、契約書、稟議書等)

【確認した事実】
(事実のみ。判断・評価は含めない)①②③

【気になった点・補足情報】・・

【出力形式の指定】

以下の構成で下書きを作成してください

1. 確認した事実(手続き別。事実のみ)
2. 追加確認が必要な事項(番号付きリスト)
3. 発見事項(重要度:高・中・低を仮評価として付記・理由も記載)
4. 改善提案(1〜3点)

【文体】
ですます調

個人名・会社名・金額は含めない(本入力にも含まれていません)
判断・評価には「(仮の評価)」と付記し、最終判断は監査役が行う旨を明記  



※ AIの活用方法は急速に進化しています。本ガイドの内容は定期的に見直し・更新されます。

※ 掲載したプロンプト例は参考例です。ご利用の環境・AIサービスに合わせて適宜調整してください。

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