IPOで関与するベェンチャーキャピタルの部門

  • ベンチャーキャピタル(VC)は、IPO準備企業にとって「資金の出し手」であると同時に、上場というゴールに向けて最も強い利害関係を共有する「共同経営パートナー」です。


  • IPOが近づくにつれ、VCの内部でも「投資を実行したキャピタリスト」だけでなく、ガバナンスや管理体制を上場水準に引き上げるための様々な専門部隊が関与してくるようになります。


  • 社長やCFOが、上場準備プロセスにおいて交渉・連携することになる「VC内の4つの関与部門(チーム)」とその役割を整理しました。


1.IPO業務におけるVC(ベンチャーキャピタル)の4つの関与部門 

2.🔄 【対比表】IPOプレイヤー3者の「スタンス(利害関係)」の違い
3. 【社長向け】VCは最高の味方ですが、上場直前は「最もタフな交渉相手」になります。

1.🏛️ IPO業務におけるVC(ベンチャーキャピタル)の4つの関与部門 

  • ️ IPO業務におけるVC(ベンチャーキャピタル)の4つの関与部門

VCの内部組織は、投資先を

  1. 「見つける」
  2. 「育てる」
  3. 「事務・管理する」
  4. 「成果を投資家に返す」

というフェーズに分かれています。


1.投資部門(フロント・キャピタリスト・投資チーム)

2.バリューアップ部門(成長支援部 / IPO支援チーム)
3.ミドル・バックオフィス部門(法務・コンプライアンス・ファンド管理部)
4.IR・ファンドレイズ部門(LPリレーション・チーム)

 1.投資部門(フロント・キャピタリスト・投資チーム)

【役割】 

  • 経営者に最も近い「二人三脚の伴走者」


【関与時期】

  •  投資実行(シード〜シリーズA)から上場日まで一貫


  • 社長が普段「〇〇さん」と呼んで膝を突き合わせている、担当キャピタリストが所属する部隊です。社外取締役として取締役会に参画することも多く、経営戦略や資本政策を一緒に練り上げます。


【IPO局面での役割 】 

  • 主幹事証券(公開引受部・ECM部)が提示してくる株価(バリュエーション)や売出比率に対して、「ファンドとしてのリターン」と「企業の成長」のバランスを取りながら、会社側の味方(あるいは交渉相手)としてファイナンス戦略を決定します。

 2.バリューアップ部門(成長支援部 / IPO支援チーム)

【役割】
 

  • 管理体制を上場水準に叩き直す「特効薬チーム」


【関与時期】

  •  N-2期 〜 申請期(N期)


  • 大手VCなどに存在する、投資先の「上場準備(エグゼキューション)」を実務面でバックアップする専門部隊です。


【IPO局面での役割】

  • キャピタリストが「攻め」の支援をするのに対し、このチームは「守り」を固めます。手薄になりがちなIPO準備企業の管理部門に対し、管理規程のひな形を提供したり、J-SOX(内部統制)の構築アドバイスを行ったりします。また、VCのネットワークを活かして、「優秀なCFO」や「常勤監査役」の候補者を企業に紹介(人材マッチング)するのもこの部門の重要な役割です。

 3.ミドル・バックオフィス部門(法務・コンプライアンス・ファンド管理部) 

【役割】

  • 上場申請書類の文字一つまでチェックする「事務とリーガルの番人」


【関与時期】

  •  N-1期 〜 申請期(N期)の直前・直後期


  • VC自身のファンド運営を守り、投資先のリーガルリスクを検証する部隊です。


【IPO局面での役割】

  •  上場申請書類(「Ⅰの部」「Ⅱの部」など)には、大株主であるVCのファンド情報や、過去の株式引受時の契約内容(投資契約・株主間契約)を正確に記載しなければなりません。


  • また、上場時にVCが保有株をどれだけ売り出すか(売出)、どれだけの期間株を売らないと約束するか(ロックアップ)の手続きや書面締結を、企業の管理部門と連携してミリ単位でミスなく処理します。

4.IR・ファンドレイズ部門(LPリレーション・チーム)

【役割】

  •  VCにお金を出した「真のオーナー」へ成果を報告する部隊


【関与時期】 

  • 申請期(N期)〜 上場後のイグジット


  • VCにお金を出してくれている「LP投資家(地方銀行、大手事業会社、年金基金など)」に対して、ファンドの運用状況を報告する部門です。


【IPO局面での役割】

  •  投資先のIPOは、VCにとってファンドの成績(IRR:内部収益率)を確定させる最大のイベントです。「〇〇社が今期、想定時価総額〇〇億円で東証に上場申請する見込みです」というレポートをLP投資家向けに作成し、上場後の株式売却(イグジット)による分配金のシミュレーションを行います。

 2.🔄 【対比表】IPOプレイヤー3者の「スタンス(利害関係)」の違い 

 【プレイヤー】


 【最大の関心事】 



 【株価に対する本音】 

 🏢 VC(ベンチャーキャピタル) 


 「時価総額(株価)の最大化」 と、確実な上場(イグジット) 

1円でも高く上場して、ファンドのパフォーマンスを上げたい。 

 🏦 主幹事証券
 


「上場を無事に成功させること」 と、購入する投資家の保護

高すぎると上場後に株価が急落(公募割れ)して投資家が損をするので、適正(やや保守的)に値決めしたい。

 🔎 監査法人 


「財務諸表の適正性」 と、内部統制(J-SOX)の厳格な運用 

株価(時価総額)の多寡には関与しない。会計ルールが守られているかのみを見る。 

3.【社長向け】VCは最高の味方ですが、上場直前は「最もタフな交渉相手」になる。

  •  IPO準備がN-1期、申請期と進むにつれ、主幹事証券会社は市場の地合いを見ながら「公募価格(売出価格)」を提示してきます。このとき、証券会社は市場での売れ残りを防ぐため、往々にして「保守的(安め)な株価」を提案しがちです。


  • ここで、社長やCFOの代わりに、あるいは彼らとスクラムを組んで『うちの会社の将来性はそんなに安くない!』と証券会社のエクイティ部門(ECM)に猛烈なプレッシャーをかけてくれるのが、VCの「投資部門(キャピタリスト)」です。


  • しかし一方で、彼らはファンドの満期(期限)も抱えています。上場時にVCが株を何%売り出すか、上場後にいつまで売却を制限(ロックアップ)されるかという実務交渉(ミドル部門との調整)では、会社側とVCの間で激しい利益のぶつかり合いが起きます。


  • この「味方であり、タフなネゴシエーターでもあるVC」と対等に渡り合い、会社の成長を最大化する資本政策をコントロールするためには、証券・監査法人だけでなく、VCのインサイド(内部事情)を熟知したCFOや監査役の存在が不可欠なのです。

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