上場審査(取引所審査)対応と監査役の役割

1.上場審査の審査期間・重点審査項目  
2.🏢 取引所審査(上場審査)の具体的な流れ 
3.監査役面談で問われるポイント 
4. 実務で差がつくポイント 
5.実務で押さえるべきチェックポイント

Ⅰ.取引所審査の質問項目 
Ⅱ.主幹事審査 vs 取引所審査の目線の違い 
Ⅲ.主幹事審査 vs 取引所審査の基本的スタンスの違い 

1.市場別 東証上場審査の審査期間 

 

【標準審査期間】 

【プライム市場】


 3か月 

 【スタンダード 市場】


 3か月

【グロース市場】

 

2か月

1.市場別 東証上場審査の重点審査項目 

  •  実質審査基準の構造は共通していますが、グロース市場のみ「高い成長可能性」という独自の審査項目が加わる点が最大の違いです。

 

【共通】3市場すべての実質審査基準 

①企業の継続性・収益性 

②企業経営の健全性

③企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性 

④企業内容等の開示の適正性 

⑤その他公益または投資者保護の観点から必要な事項

①企業の継続性・収益性 

  • 会社の事業が継続的かつ安定的に利益を獲得できるか。

 ②企業経営の健全性

  • 役員構成に偏り(同族色が強い等)がなく、意思決定は公正か。


  • 役員の兼職により、機動的・適正な意思決定に支障はないか。


  • 監査役(監査等委員・監査委員)については、取締役・執行役の配偶者・二親等内の血族・姻族が就任している場合は「自己監査」とみなし、有効な監査は期待できない(3市場共通・手引書に明記)。

③企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性

 手引書において最も詳細に記載されている4つの審査項目です。 

a. 経営管理組織・社内規程の整備 

  1. 組織運営関係規程(取締役会規程・監査役会規程・業務分掌規程等)
  2. 人事労務関係規程(就業規則・給与規程・退職金規程等)
  3. 業務管理関係規程(予算管理規程・販売管理規程・購買管理規程等)
  4. 経理関係規程
  5. 社内規程と実務の整合性


b. 監査役・監査体制 

手引書に直接記載されているポイントは以下のとおり 

  1. 監査役による取締役・会計参与の業務執行に対する牽制機能の有効性
  2. 担当監査法人や内部監査と連携して適切に実施しているか(三様監査の連携)
  3. 監査役の取締役会出席状況
  4. 常勤監査役等および独立役員に対する面談を通じて、職務の内容と取組状況を確認(3市場共通・手引書に明記)


c. 内部監査体制 

  1. 会社の規模・業種・業態・成長ステージに応じた有効な内部監査(計画・実行・報告)が行われているか
  2. 被監査部門が内部監査の指摘事項に対して適切な対応をとっているか
  3. 内部監査部門を設けていない場合は、代替的な手段をとっているか(グロース手引書に明記)
  4. 内部監査等の内部統制の運用状況が重要な審査項目


d. 予算統制・経理事務 

  1. 経理事務フローチャートを用いた運用状況の確認
  2. 予算が組織的・合理的に策定されているか
  3. 上場後の投資家向け開示に耐える情報の質を有しているか

④企業内容等の開示の適正性

 ⑤その他公益または投資者保護の観点から必要な事項 

 【グロース市場のみ】高い成長可能性に係る審査 

  • グロース市場特有の審査項目として、上場申請の1週間以上前に主幹事証券会社と東証の間で事前確認が行われます。確認内容は以下です。


①申請会社がグロース市場の適合要件である「高い成長可能性」を有しているか否か。

②上場日に「事業計画及び成長可能性に関する事項」の開示が必要

この点はプライム・スタンダードには存在しない、グロース市場固有の審査項目です。 

 監査役に関して手引書が特に明記している点

①自己監査の禁止(3市場共通)

  •  取締役・執行役の配偶者・二親等内の血族・姻族が監査役に就任している場合、形式だけで有効な監査の実施が損なわれる状況と判断する。


②常勤監査役への面談(3市場共通)

  •  コーポレート・ガバナンスにおける重要性から、常勤監査役等および独立役員に対する面談を通じて職務の内容と取組状況を確認する。


③三様監査の連携確認(3市場共通)

  •  監査法人・内部監査との連携が適切に行われているかを確認する。


④上場承認後も監査資料の継続提出が必要(3市場共通)

  •  上場日までの間、取締役会議事録や監査役監査資料などの継続提出書類を提出する必要がある(手引書に明記)。

2.🏢 取引所審査(上場審査)の具体的な流れ

(グロース市場を前提)→他市場は別ページを参照

  • 主幹事審査が「数ヶ月かけて合格レベルまで引き上げる『並走型の 模擬試験 』」だとすれば、取引所審査は「わずか2〜3ヶ月で合否をシビアに判定される『一発勝負の本番入試』」です。


  • 主幹事審査の時は、回答に不備があっても「じゃあ、来月までに直してください」が通用しましたが、東証審査でそれをやると「上場延期(申請取り下げ)」の引き金になりかねません。


  • 申請から上場承認まで、約2〜3ヶ月の超過密スケジュールで進む取引所審査の具体的なプロセスを整理しました。


① 上場申請 & 第1次書面質問 

  • 仮設例

② 第2次書面質問 & 各種ヒアリング

  • 仮設例 

③ 監査法人への直接ヒアリング 

  • 仮設例(監査役が関わる場面)

④ 実地調査(現場の視察)  

⑤ 社長面談(最終面談) ➔ 上場承認 

①上場申請 & 第1次書面質問:申請〜2週間目

  • 主幹事証券を通じて正式に上場申請を行います。書類が受理されると、わずか数日〜1週間程度で取引所から「第1次質問事項(書面)」が届きます。主幹事審査で出し尽くしたはずのデータに対し、さらに鋭い切り口で数十問〜100問近く突っ込まれ、約1週間でのスピード回答を求められます。

仮設例_上場申請から第1次書面質問まで——最初の2週間、監査役は何をしていたか 

【「審査が始まった」という緊張感と、予想外の論点

※本事例は実務でよくあるパターンをもとにした仮設例です。特定の企業・個人を指すものではありません。

登場人物と会社の概要

会社】社員数130名・クラウドサービス・コンサルティング業・東証グロース上場申請直後

【社長】創業12年目
申請日を迎え、表向きは落ち着いているが、内心は相当緊張している

【CFO】申請書類の作成を主導してきた。
申請後は「あとは審査を待つだけ」という感覚

【常勤監査役(語り手)】元金融機関出身
申請書類の監査役関連記載を全てチェックしてきた。就任から2年1ヶ月目

【主幹事証券の担当者】申請後も伴走する立場
書面質問への対応をサポート

【取引所の審査担当者(Ⅰ)】書面質問を通じてやりとりする相手。直接会うのは後の段階

申請日当日—「出した」という安堵と、始まる緊張】

申請書類を取引所に提出した日の夕方、社内で簡単な打ち上げがありました。

社長がグラスを持ち上げて言いました。

「長かった。N-3期から数えると3年以上かかった。
ここまで来られたのは皆のおかげです。
あとは審査を通過するだけ」

「あとは審査を通過するだけ」

——その言葉が少し引っかかりました。

申請は、ゴールではありません。
本当の審査はここから始まります。

この日の夜、私は自分のノートにこう書きました。

「今日から審査が始まった。書面質問に向けて、監査役として説明できる準備を整えること」

仮設例_上場申請から第1次書面質問まで _【申請翌日——監査役としての「自己点検」】

申請翌日——監査役としての「自己点検」

申請の翌日から、私は自分の監査記録の最終整理を始めました。

取引所の審査では、申請書類の記載と監査役の活動実態が一致しているかが確認されます。

審査担当者が「ここに書いてあることを詳しく教えてください」と言ってきたとき、即座に説明できる状態にしておく必要があります。

確認したのは以下の4点です。

①申請書類の監査役関連記載の最終確認

有価証券届出書・Ⅰの部に記載された監査役の略歴・活動状況・監査体制の記述を通読しました。

気になった点が1つありました。「監査役は取締役会に毎回出席している」という記載がありましたが、N-3期の第3四半期に体調不良で1回欠席していた事実があります。「毎回」という表現は正確ではないかもしれません。

主幹事証券に確認したところ、「出席率95%以上なので表現としては問題ないが、欠席回があったことは事実として把握しておくこと」という回答でした。

②監査調書の体系的な整理

N-3期からの監査調書を、期別・部門別・テーマ別に整理しました。

調書の数は3年間で38本。
「どの調書がどの審査の質問に対応できるか」を頭の中でマッピングしました。

③三様監査の連携記録の確認

監査法人との定期会合の議事録(12回分)と、内部監査との連携記録(16回分)を確認しました。いずれも記録が残っており、日付・参加者・議題・主な発見事項が記載されていました。

④関連当事者取引の最終確認

  • 申請書類に記載された関連当事者取引の一覧と、実際の取引記録を照合しました。記載漏れがないかを確認するためです。

仮設例_上場申請から第1次書面質問まで _【申請3日目—主幹事証券から「審査の流れ」の説明】

【申請3日目——主幹事証券から「審査の流れ」の説明】

申請から3日後、主幹事証券の担当者から連絡がありました。

「取引所への申請が受理されました。これから審査が本格的に始まります。まず2週間程度で第1次書面質問が届きます。質問数は通常50〜100問程度です」

「書面質問の内容は、どのような領域が多いですか」

「企業の継続性・収益性、コーポレートガバナンスの実態、内部管理体制の有効性、開示の適正性——この4領域が中心です。
監査役に関しては、独立性・活動状況・三様監査の連携が必ず問われます」

「私(監査役)に対して直接質問が来ることはありますか」

「書面質問の回答は会社(社長・CFO)が主体ですが、監査役の活動に関する質問については、監査役が関与した形で回答することが望ましいです。
また、後の段階でヒアリングがあります。
監査役への個別ヒアリングは必ず実施されます」

仮設例_上場申請から第1次書面質問まで _【申請5日目—社内で起きた「小さな問題」】

申請5日目—社内で起きた「小さな問題」

申請から5日後の朝、CFOから連絡がありました。

「申請書類の財務数値に1点、軽微な誤記を発見しました。金額の単位が百万円のところを千円と記載している箇所が1つあります」

私はCFOに確認しました。

「金額の大きさはどのくらいですか」

「取引規模からすると、投資家の判断に影響を与えるレベルではありません。ただ、記載としては誤りです」

私は即座に言いました。
「主幹事証券に報告して、訂正の手続きを確認してください。
軽微であっても、発見した誤記は正直に開示することが原則です」

CFOは「そこまでしなくていいのでは」という様子でしたが、
主幹事証券に報告したところ、「訂正届出書の提出が必要」という指示が来ました。

小さな誤記であっても、発見したら即報告——これが審査期間中の鉄則です。

仮設例_上場申請から第1次書面質問まで _【申請8日目—取引所から最初の連絡】

申請8日目—取引所から最初の連絡

申請から8日後、主幹事証券経由で取引所から最初の連絡が入りました。

書面質問ではなく、「申請書類の一部について補足資料の提出を求める」という内容でした。

求められた資料は3点でした。

補足資料①:内部監査の実施状況に関する詳細資料

申請書類には「内部監査を実施している」と記載されていますが、具体的な実施内容・対象部門・発見事項・改善状況についての詳細資料の提出を求める、というものでした。

補足資料②:監査役の活動状況に関する詳細資料

監査役の活動状況について、N-3期からN-1期の各期の取締役会出席率・監査の実施内容・監査調書の作成状況・三様監査の連携状況を一覧にした資料の提出を求める、というものでした。

補足資料③:関連当事者取引に関する追加説明資料

申請書類に記載された関連当事者取引(社長の配偶者が代表を務める会社への業務委託)について、取引の必要性・条件の合理性・他の選択肢との比較を説明する資料の提出を求める、というものでした。

この3点を見て、
私は「やはりここが来た」と思いました。

  1. 内部監査
  2. 監査役の活動
  3. 関連当事者取引


——これらはIPO審査で監査役が必ず問われる3大論点です。


補足資料①の対応——内部監査の「見える化」

内部監査の詳細資料の作成を、内部監査担当者(兼務)と連携して行いました。

作成した資料の構成は以下のとおりです。

【年度別の内部監査実施概要(N-3期〜N-1期)】

具体的に、

  1. 監査対象部門数
  2. 往査実施回数
  3. 監査調書の本数
  4. 発見した指摘事項の数
  5. 是正済みの件数
  6. 三様監査の会議の回数
  7. 内部監査人との会議の回数


などをN-3期~N-1期ごとに一覧列挙
→下記の図表に整理


数字を並べながら、改めて思いました。

「是正済み件数」が「発見した指摘事項数」とほぼ一致していることは、フォローアップが機能している証拠です。
これは審査でプラスに評価されるはずです。

主な発見事項と改善内容(直近3件)

発見事項の具体的な内容・改善提案・改善後の確認記録を3事例抜粋して記載しました。

「問題なし」の一言で終わらず、具体的な発見事項と改善経緯があることが、「実質的な監査が行われた」証拠になります。

【補足資料②の対応——監査役活動の「一覧表」】

監査役の活動状況については、私自身が作成しました。

【3年間の監査役活動サマリー(N-3期〜N-1期)】

N-3期の取締役会欠席について、注記を入れました。

→下記の図表に整理

「N-3期第3四半期、体調不良により1回欠席。欠席回の議事録・資料は事前に確認し、翌月取締役会で内容を確認済み」

欠席の事実を隠すのではなく、「欠席後にどう対処したか」まで記載することが、誠実な開示として評価されます。

主な監査上の発見事項と対応(直近3件)

これも具体的な事例を3件記載しました。

補足資料③の対応——関連当事者取引の「説明」】

関連当事者取引(社長の配偶者が代表を務める会社への業務委託)は、最も慎重に説明が必要な案件でした。

私はCFO・社長と協議しながら、以下の構成で資料を作成しました。

【取引の概要】

  1. 取引内容:広報・PR業務の委託
  2. 委託額:月額80万円(年間960万円)
  3. 取引開始:N-3期より


【取引の必要性の説明】

社内に広報専門人材がおらず、外部委託が合理的という判断。上場に向けた広報活動の強化が必要な時期に、即戦力として対応できる体制を確保するための選択。

【条件の合理性の説明】

同種のPR業務を請け負う外部業者3社から見積りを取得し、委託額が市場水準の範囲内であることを確認。比較資料を添付。

【監査役としての確認内容】

取引の必要性・条件の合理性について、監査役として確認した事実と、取締役会で審議・承認された記録を記載。

私が強くこだわったのは「監査役として確認した」という記録の明示です。単に「合理的である」と記載するだけでなく、「監査役が独立した立場で確認した」という事実を記載することで、取引の透明性を示しました。

年度別の内部監査実施概要(N-3期〜N-1期)

 【項目】 

監査対象部門数

 実施した監査調書数

 発見した指摘事項数

 是正済み件数

【N-3期】

4部門

8本

6件

5件

 【N-2期】
5部門

12本

9件

9件

【N-1期】
6部門

14本

7件

6件(1件対応中)

3年間の監査役活動サマリー(N-3期〜N-1期)

 【項目】 
取締役会出席率

監査調書作成数

部門往査実施数

監査法人との連携会合

内部監査人との連携会合

社長との個別面談

【N-3期】

95%(1回欠席)

9本

4回

4回

4回

6回

 【N-2期】
100%

13本

6回

4回

5回

8回

【N-1期】
100%

16本

7回

4回

7回

10回

仮設例_上場申請から第1次書面質問まで _【申請12日目—第1次書面質問が届いた】

【申請12日目——第1次書面質問が届いた】

申請から12日後、主幹事証券経由で取引所からの第1次書面質問が届きました。

質問数は68問。

主幹事証券の担当者からの説明がありました。

「今回の68問は標準的な範囲内です。
補足資料を先に提出していたので、内部管理体制と監査役関連の質問は比較的少なくなっています。

逆に、事業モデルの継続性と収益構造に関する質問が多めです」

68問の内訳を確認しました。

質問のカテゴリーとその数、概要】

→「一覧表は次項を参照」

【概要事業・収益性】24問、競合優位性、解約率、顧客獲得コスト等

【コーポレートガバナンス】15問、取締役会構成、意思決定プロセス等

【内部管理体制】12問、内部統制、内部監査、リスク管理等

【財務・会計】10問、収益認識、引当金計上基準等

【監査役・監査体制】5問、監査役の独立性、三様監査の実態等

【関連当事者取引】2問、配偶者会社との取引の合理性等

監査役に直接関わる質問が5問、
関連当事者取引が2問、
合計7問が常勤監査役が直接関与すべき質問でした。

監査役に関わる5問の中身
5問の内容は以下のとおりでした。

Q1:監査役の独立性について

「常勤監査役は、就任の経緯として社長の紹介とのことですが、社長との個人的な関係について詳しく教えてください。

また、社長の業務執行を監査する立場として、独立性をどのように確保していますか」

Q2:監査役の活動実態について

「補足資料に記載された3年間の監査役活動について、監査調書の作成・保管状況と、主な発見事項への対応経緯を具体的に説明してください」

Q3:取締役会での監査役の役割について

「取締役会において、監査役として意見を述べた具体的な事例を教えてください。また、取締役の提案に対して懸念を示したことがある場合、その経緯と結果を教えてください」

Q4:三様監査の連携について

「監査役・監査法人・内部監査の三様監査について、それぞれの連携方法・頻度・主な共有内容を具体的に説明してください。
また、内部監査の結果が監査役の監査にどのように活用されているかを教えてください」

Q5:内部通報制度の監査役の関与について

「内部通報制度について、監査役はどのように関与していますか。通報があった場合の対応フローと、監査役への報告経路を説明してください」

5問への回答方針——「事実をそのまま」が最善
5問を見ながら、私は回答方針を整理しました。

Q1(独立性)への回答方針

社長の紹介で就任したことは事実なので、隠さず記載する。その上で「就任後の監査活動において社長の判断に異議を唱えた具体的な事例」を記載することで、独立性が実質的に機能していることを示す。

→これまでの3年間に積み上げてきた「言いにくいことを言った記録」が、ここで活きてくる。

Q3(取締役会での意見表明)への回答方針

関連当事者取引への異議、業績予測への質問、重要案件の再審議要請
——具体的な事例を記載する。「意見を述べた事実」と「その結果取締役会でどうなったか」を記録と共に示す。

Q4(三様監査)への回答方針

連携記録(議事録・メモ)を根拠に、「いつ・誰と・何を共有したか」を具体的に記載する。
「連携しています」という抽象的な回答ではなく、事実の記録を示す。

年度別の内部監査実施概要(N-3期〜N-1期)

 【項目】 

内部管理体制

 財務会計

 監査役・監査体制

 関連当事者取引

【質問数】

12問

10問

5問

2問

【概要】 

内部統制、内部監査、リスク管理等

 収益認識、引当金計上基準等 
 

監査役の独立性、三様監査の実態等 


監査役の独立性、三様監査の実態等

仮設例_上場申請から第1次書面質問まで _【2週間を終えて—監査役として感じたこと】

【2週間を終えて——監査役として感じたこと

申請から2週間が終わった夜、私はノートを開きました。

「第1次書面質問が届いた。68問。監査役関連は7問。
どの質問も、この3年間にやってきたことの説明を求めるものだった。
やってきたことをそのまま説明すればいい。それだけだ」

3年間の監査調書・三様監査の連携記録・取締役会での発言記録
——これらは単なる書類ではありません。

「監査役として職責を全うしてきた事実の蓄積」であり、それがそのまま審査への回答になります。

申請前の準備期間に何度も言われた言葉を思い出しました。

「調書に書いておけば、審査で困らない」

その通りでした。


第1次書面質問への回答にあたって——監査役が注意すべき3点】

①「監査役として確認した」という主語を明示する

回答の中で「会社として確認しました」ではなく「監査役として独立した立場で確認しました」という表現を使うことで、監査役の機能が実質的に働いていることを示します。

②具体的な事例・日付・記録を根拠として示す

「〇年〇月の取締役会において、監査役から△△について質問し、○○という回答があった(取締役会議事録○年○月○日付参照)」——このように具体的な根拠を示すことが、信頼性の高い回答になります。

③不都合な事実も正直に記載する

取締役会の欠席・初期の監査調書の薄さ・過去の指摘事項の未対応
——これらを隠すと、後のヒアリングで矛盾が生じます。

不都合な事実は「その後どう対処したか」とセットで正直に記載することが、審査官の信頼を得る最も確実な方法です。


この事例が伝えたいこと

上場申請から第1次書面質問までの2週間は、「待つ期間」ではありません。

  1. 申請書類の記載と自分の認識の一致を確認する
  2. 監査記録を体系的に整理し、質問への対応準備をする
  3. 補足資料の要請に迅速・誠実に対応する
  4. 第1次書面質問の各問を読み、「事実をそのまま説明する」準備をする


この2週間の過ごし方が、その後の審査の流れを大きく左右します。

そして何より、この2週間に「準備できているか否か」は、就任から審査までの3年間に何をしてきたかで決まります。

審査は、日頃の監査活動の「答え合わせ」です。

本事例は実務でよくあるパターンをもとにした仮設例です。特定の企業・個人を指すものではありません。

出典:IPO監査役ひろば(https://www.kansayaku.net/)

②第2次書面質問 & 各種ヒアリング:3週間目〜5週間目

  • 第1次回答の「書類の隙間」を突く第2次質問が届きます。これと並行して、取引所の審査官による対面(またはオンライン)のインタビューがスタートします。CFO、内部監査室長、そして「監査役」へのヒアリングがこのタイミングで一気に実施されます

仮設例_第2次書面質問&各種ヒアリング——3週間目〜5週間目

申請3日目——主幹事証券から「審査の流れ」の説明】

申請から3日後、主幹事証券の担当者から連絡がありました。

「取引所への申請が受理されました。これから審査が本格的に始まります。まず2週間程度で第1次書面質問が届きます。質問数は通常50〜100問程度です」

「書面質問の内容は、どのような領域が多いですか」

「企業の継続性・収益性、コーポレートガバナンスの実態、内部管理体制の有効性、開示の適正性——この4領域が中心です。
監査役に関しては、独立性・活動状況・三様監査の連携が必ず問われます」

「私(監査役)に対して直接質問が来ることはありますか」

「書面質問の回答は会社(社長・CFO)が主体ですが、監査役の活動に関する質問については、監査役が関与した形で回答することが望ましいです。
また、後の段階でヒアリングがあります。
監査役への個別ヒアリングは必ず実施されます」

仮設例_上場申請から第1次書面質問まで_【申請8日目—取引所から最初の連絡】

申請8日目——取引所から最初の連絡】

申請から8日後、主幹事証券経由で取引所から最初の連絡が入りました。

書面質問ではなく、「申請書類の一部について補足資料の提出を求める」という内容でした。

求められた資料は3点でした。

補足資料①:内部監査の実施状況に関する詳細資料

申請書類には「内部監査を実施している」と記載されていますが、具体的な実施内容・対象部門・発見事項・改善状況についての詳細資料の提出を求める、というものでした。

補足資料②:監査役の活動状況に関する詳細資料

監査役の活動状況について、N-3期からN-1期の各期の取締役会出席率・監査の実施内容・監査調書の作成状況・三様監査の連携状況を一覧にした資料の提出を求める、というものでした。

補足資料③:関連当事者取引に関する追加説明資料

申請書類に記載された関連当事者取引(社長の配偶者が代表を務める会社への業務委託)について、取引の必要性・条件の合理性・他の選択肢との比較を説明する資料の提出を求める、というものでした。

この3点を見て、
私は「やはりここが来た」と思いました。

  1. 内部監査
  2. 監査役の活動
  3. 関連当事者取引


——これらはIPO審査で監査役が必ず問われる3大論点です。

補足資料①の対応——内部監査の「見える化」

内部監査の詳細資料の作成を、内部監査担当者(兼務)と連携して行いました。

作成した資料の構成は以下のとおりです。
【年度別の内部監査実施概要(N-3期〜N-1期)】

具体的に、

  1. 監査対象部門数
  2. 往査実施回数
  3. 監査調書の本数
  4. 発見した指摘事項の数
  5. 是正済みの件数
  6. 三様監査の会議の回数
  7. 内部監査人との会議の回数


などをN-3期~N-1期ごとに一覧列挙


数字を並べながら、改めて思いました。

「是正済み件数」が「発見した指摘事項数」とほぼ一致していることは、フォローアップが機能している証拠です。
これは審査でプラスに評価されるはずです。

主な発見事項と改善内容(直近3件)

発見事項の具体的な内容・改善提案・改善後の確認記録を3事例抜粋して記載しました。

「問題なし」の一言で終わらず、具体的な発見事項と改善経緯があることが、「実質的な監査が行われた」証拠になります。


【補足資料②の対応——監査役活動の「一覧表」】

監査役の活動状況については、私自身が作成しました。

【3年間の監査役活動サマリー(N-3期〜N-1期)】

N-3期の取締役会欠席について、注記を入れました。

「N-3期第3四半期、体調不良により1回欠席。欠席回の議事録・資料は事前に確認し、翌月取締役会で内容を確認済み」

欠席の事実を隠すのではなく、「欠席後にどう対処したか」まで記載することが、誠実な開示として評価されます。

主な監査上の発見事項と対応(直近3件)
これも具体的な事例を3件記載しました。

補足資料③の対応——関連当事者取引の「説明」】

関連当事者取引(社長の配偶者が代表を務める会社への業務委託)は、最も慎重に説明が必要な案件でした。

私はCFO・社長と協議しながら、以下の構成で資料を作成しました。

【取引の概要】

  1. 取引内容:広報・PR業務の委託
  2. 委託額:月額80万円(年間960万円)
  3. 取引開始:N-3期より


【取引の必要性の説明】

社内に広報専門人材がおらず、外部委託が合理的という判断。上場に向けた広報活動の強化が必要な時期に、即戦力として対応できる体制を確保するための選択。

【条件の合理性の説明】

同種のPR業務を請け負う外部業者3社から見積りを取得し、委託額が市場水準の範囲内であることを確認。比較資料を添付。

【監査役としての確認内容】

取引の必要性・条件の合理性について、監査役として確認した事実と、取締役会で審議・承認された記録を記載。

私が強くこだわったのは「監査役として確認した」という記録の明示です。単に「合理的である」と記載するだけでなく、「監査役が独立した立場で確認した」という事実を記載することで、取引の透明性を示しました。

仮設例_上場申請から第2次書面質問まで_【申請12日目】

【申請12日目——第1次書面質問が届いた】

申請から12日後、主幹事証券経由で取引所からの第1次書面質問が届きました。

質問数は68問。

主幹事証券の担当者からの説明がありました。

「今回の68問は標準的な範囲内です。
補足資料を先に提出していたので、内部管理体制と監査役関連の質問は比較的少なくなっています。

逆に、事業モデルの継続性と収益構造に関する質問が多めです」

68問の内訳を確認しました。

【質問のカテゴリーとその数、概要】
【概要事業・収益性】24問、競合優位性、解約率、顧客獲得コスト等

【コーポレートガバナンス】15問、取締役会構成、意思決定プロセス等

【内部管理体制】12問、内部統制、内部監査、リスク管理等

【財務・会計】10問、収益認識、引当金計上基準等

【監査役・監査体制】5問、監査役の独立性、三様監査の実態等

【関連当事者取引】2問、配偶者会社との取引の合理性等

監査役に直接関わる質問が5問、
関連当事者取引が2問、
合計7問が常勤監査役が直接関与すべき質問でした。

監査役に関わる5問の中身
5問の内容は以下のとおりでした。

Q1:監査役の独立性について

「常勤監査役は、就任の経緯として社長の紹介とのことですが、社長との個人的な関係について詳しく教えてください。

また、社長の業務執行を監査する立場として、独立性をどのように確保していますか」

Q2:監査役の活動実態について

「補足資料に記載された3年間の監査役活動について、監査調書の作成・保管状況と、主な発見事項への対応経緯を具体的に説明してください」

Q3:取締役会での監査役の役割について

「取締役会において、監査役として意見を述べた具体的な事例を教えてください。また、取締役の提案に対して懸念を示したことがある場合、その経緯と結果を教えてください」

Q4:三様監査の連携について
「監査役・監査法人・内部監査の三様監査について、それぞれの連携方法・頻度・主な共有内容を具体的に説明してください。
また、内部監査の結果が監査役の監査にどのように活用されているかを教えてください」

Q5:内部通報制度の監査役の関与について

「内部通報制度について、監査役はどのように関与していますか。通報があった場合の対応フローと、監査役への報告経路を説明してください」

5問への回答方針——「事実をそのまま」が最善
5問を見ながら、私は回答方針を整理しました。

Q1(独立性)への回答方針

社長の紹介で就任したことは事実なので、隠さず記載する。その上で「就任後の監査活動において社長の判断に異議を唱えた具体的な事例」を記載することで、独立性が実質的に機能していることを示す。

→これまでの3年間に積み上げてきた「言いにくいことを言った記録」が、ここで活きてくる。

Q3(取締役会での意見表明)への回答方針

関連当事者取引への異議、業績予測への質問、重要案件の再審議要請
——具体的な事例を記載する。「意見を述べた事実」と「その結果取締役会でどうなったか」を記録と共に示す。

Q4(三様監査)への回答方針

連携記録(議事録・メモ)を根拠に、「いつ・誰と・何を共有したか」を具体的に記載する。
「連携しています」という抽象的な回答ではなく、事実の記録を示す。


【2週間を終えて——監査役として感じたこと】

申請から2週間が終わった夜、私はノートを開きました。
「第1次書面質問が届いた。68問。監査役関連は7問。
どの質問も、この3年間にやってきたことの説明を求めるものだった。
やってきたことをそのまま説明すればいい。それだけだ」

3年間の監査調書・三様監査の連携記録・取締役会での発言記録
——これらは単なる書類ではありません。

「監査役として職責を全うしてきた事実の蓄積」であり、それがそのまま審査への回答になります。

申請前の準備期間に何度も言われた言葉を思い出しました。

「調書に書いておけば、審査で困らない」

その通りでした。

仮設例_上場申請から第1次書面質問まで_【2週間を終えて—監査役として感じたこと】

【2週間を終えて——監査役として感じたこと】

申請から2週間が終わった夜、私はノートを開きました。

「第1次書面質問が届いた。68問。監査役関連は7問。
どの質問も、この3年間にやってきたことの説明を求めるものだった。
やってきたことをそのまま説明すればいい。それだけだ」

3年間の監査調書・三様監査の連携記録・取締役会での発言記録
——これらは単なる書類ではありません。

「監査役として職責を全うしてきた事実の蓄積」であり、それがそのまま審査への回答になります。

申請前の準備期間に何度も言われた言葉を思い出しました。

「調書に書いておけば、審査で困らない」

その通りでした。

【第1次書面質問への回答にあたって——監査役が注意すべき3点】

①「監査役として確認した」という主語を明示する

回答の中で「会社として確認しました」ではなく「監査役として独立した立場で確認しました」という表現を使うことで、監査役の機能が実質的に働いていることを示します。

②具体的な事例・日付・記録を根拠として示す

「〇年〇月の取締役会において、監査役から△△について質問し、○○という回答があった(取締役会議事録○年○月○日付参照)」——このように具体的な根拠を示すことが、信頼性の高い回答になります。

③不都合な事実も正直に記載する

取締役会の欠席・初期の監査調書の薄さ・過去の指摘事項の未対応
——これらを隠すと、後のヒアリングで矛盾が生じます。

不都合な事実は「その後どう対処したか」とセットで正直に記載することが、審査官の信頼を得る最も確実な方法です。

【この事例が伝えたいこと】

上場申請から第1次書面質問までの2週間は、「待つ期間」ではありません。

  1. 申請書類の記載と自分の認識の一致を確認する
  2. 監査記録を体系的に整理し、質問への対応準備をする
  3. 補足資料の要請に迅速・誠実に対応する
  4. 第1次書面質問の各問を読み、「事実をそのまま説明する」準備をする


この2週間の過ごし方が、その後の審査の流れを大きく左右します。

そして何より、この2週間に「準備できているか否か」は、就任から審査までの3年間に何をしてきたかで決まります。

審査は、日頃の監査活動の「答え合わせ」です。

本事例は実務でよくあるパターンをもとにした仮設例です。特定の企業・個人を指すものではありません。

出典:IPO監査役ひろば(https://www.kansayaku.net/)

仮設例_第2次書面質問&各種ヒアリング—3週間目〜5週間目

【「書面で答えたはずなのに、また聞いてくる」。そこに審査の本質があった。】


※本事例は実務でよくあるパターンをもとにした仮設例です。特定の企業・個人を指すものではありません。

【前回までのあらすじ】

申請から2週間目に第1次書面質問68問が届いた。

監査役関連は7問。
取締役会での意見表明・三様監査の連携・内部通報への関与が中心だった。

1週間かけて回答を作成し、主幹事証券のチェックを経て取引所に提出した。

「これで少し落ち着けるかと思った」
——しかし3週間目に入った月曜日の朝、主幹事証券から電話が来た。

「第2次書面質問が届きました。今回は32問です」

3週間目——第2次書面質問が届く
第2次書面質問の32問は、第1次への回答を受けた「深掘り」でした。
全体の構成を見ると、性格が明確に変わっていました。
→【一覧表は次項】

【カテゴリ 質問数 第1次との違い】

【事業・収益性の深掘り】10問 、特定顧客への依存・解約率の動向・競合の名指し

【ガバナンスの実態確認】9問、具体的な議事録の内容・根回しの有無の確認
 
【内部管理体制の実態】7問、発見事項の具体的内容・是正の確認方法
 
【監査役活動の深掘り】4問、独立性の実質・発言事例の具体化要求
 
【関連当事者取引の追加確認】2問、第三者性の証明・取締役会審議の実態

主幹事証券の担当者は言いました。

「第2次は"言い訳を封じる"質問が多くなります。
第1次で『監査役は取締役会で意見を述べています』と回答したら、第2次では『具体的にどの取締役会で・何について・どう述べたのか日付と内容を示してください』という形で来ます」

3週間目——第2次書面質問が届く

 【項目】 

事業・収益性の深掘り


 ガバナンスの実態確認

 

 内部管理体制の実態


 監査役活動の深掘り


 関連当事者取引の追加確認

【質問数】

10問


9問


7問


4問


2問

【第1次との違い】 

 特定顧客への依存・解約率の動向・競合の名指し 

 具体的な議事録の内容・根回しの有無の確認

 発見事項の具体的内容・是正の確認方法

 独立性の実質・発言事例の具体化要求

 第三者性の証明・取締役会審議の実態 

仮設例_第2次書面質問&各種ヒアリング_【監査役への4問—「具体性」を徹底的に問われた】

監査役への4問——「具体性」を徹底的に問われた】

監査役に関わる4問の内容は以下のとおりです。

Q1(独立性の実質)

「前回の回答で、監査役は就任後に社長の業務執行に対して複数回意見を述べたとのことでした。
具体的に、
①いつ(日付)
②どの会議・場面で
③何について
④どのような意見を述べ
⑤その結果どうなったか
を3事例以上、取締役会議事録等の記録と合わせて説明してください」

Q2(三様監査の実質)

「監査法人との連携会合について、直近1年間の会合の日付・参加者・主な議題・監査役が把握した発見事項の内容と、それを監査役の監査にどう活用したかを具体的に説明してください」

Q3(内部監査の発見事項への関与)

「内部監査の発見事項のうち、監査役が重要と判断して追加確認または取締役会への報告を求めた事例があれば、その経緯と結果を教えてください」

Q4(内部通報の実態)

「過去3年間に内部通報がありましたか。あった場合、件数・内容の概要・監査役への報告経緯・対応結果を説明してください。
なかった場合、通報がなかった理由についての監査役の認識を教えてください」

Q1への回答準備——「具体的な3事例」を選ぶ
Q1は、「意見を述べた事例を3つ以上、記録と共に示す」という要求でした。

私の手元には、3年間で取締役会において意見を述べた記録が14件ありました。
その中から、審査上の説得力が高い3件を選びました。


【事例A:関連当事者取引への異議(N-2期・第2四半期)】

社長の兄が代表を務める会社への業務委託(年間2,160万円)について、第三者性の証明を求めた事例。

取締役会議事録に「監査役より関連当事者取引の整理を求める発言があった」と記録されている。
その後、取引条件の整理と有価証券届出書への適切な開示が実施された。


【事例B:事業計画の根拠への質問(N-2期・第4四半期)】

翌期の売上成長率180%という計画について、積み上げ根拠の提示を求めた事例。


取締役会議事録に「監査役より計画の数値根拠について質問があり、次回取締役会で積み上げ試算を提出することになった」と記録されている。その後、計画値が163%に修正された。

【事例C:重要案件の審議プロセスへの問題提起(N-1期・第1四半期)】

3億円の第三者割当増資が前日夜の追加議題として上程されたことに対し、審議の充実を求めた事例。

臨時取締役会が開催され、充実した資料と議論を経て承認された。

3つの事例はいずれも、取締役会議事録に記録が残っており、その後の経緯も確認できる状態にありました。

「言ってきたことが、記録として残っている」
——日頃の積み上げの意味を、改めて実感しました。

Q4への回答——「通報がなかった理由」が難しかった

Q4は2つのパートに分かれていました。通報があった場合となかった場合。
この会社では、過去3年間に内部通報の申し出は公式には1件ありました。
N-2期のハラスメント事案で、社員が内部通報窓口ではなく私(監査役)に直接話しかけてきたケースです。これは「内部通報窓口が機能していなかった」という側面があります。

回答では正直に記載しました。

「過去3年間で、内部通報窓口への正式な通報は0件でした。ただし、N-2期に社員が監査役に直接申し出た事案が1件あり、監査役として事実確認・第三者調査の実施を主導しました。

内部通報窓口への正式通報がなかった背景として、当時の窓口担当者と事案関係者が近い関係にあったことが要因の一つと認識しています。その後、窓口担当者を変更し、外部窓口を新設しました」

「通報がなかった」ではなく「窓口が機能していなかった」という事実を正直に書きました。

主幹事証券の担当者は「正直に書いた方が信頼性が高い」と言いました。

仮設例_第2次書面質問&各種ヒアリング_ 【4週間目—主幹事証券によるヒアリング】 

【4週間目——主幹事証券によるヒアリング】

書面質問への回答を提出して数日後、主幹事証券による社内ヒアリングが始まりました。

【ヒアリングの目的】

主幹事証券のヒアリングは、「書面で回答した内容を、口頭でも一貫して説明できるか」を確認するものです。

書面の回答と口頭の説明が矛盾すると、「準備した答えを書いただけで、実態が違う」と判断されます。

【ヒアリングの対象者と順序】

社長(2時間)→CFO(1時間)→監査役(1時間30分)→内部監査担当者(45分)→営業本部長(1時間)という順序でした。

監査役へのヒアリングは、書面質問の回答よりも深掘りされた質問が来ました。

監査役ヒアリングの実際——「自分の言葉で答えられるか」

ヒアリング開始から5分で、担当者のスタンスが見えました。
書面の回答を画面で見ながら、「この回答の根拠をもう少し詳しく」という形で深掘りしてくる。

書面に書いたことを「覚えている」のではなく「理解している」かを確認しています。

印象に残った質問を3つ挙げます。

【質問①】

「回答の中に『取締役会において監査役として懸念を示した』という表現があります。懸念を示したとき、社長はどんな反応でしたか。その場の空気感を教えてもらえますか」

書面には書けない「空気感」を聞いてきました。

私は正直に答えました。

「最初は『なぜそんなことを聞くのか』という表情をされることが多かったです。
ただ、議事録に記録を残し、後で主幹事証券にも同じ内容を確認してもらうことで、徐々に『監査役に言われたことは対応しなければならない』という空気になっていきました」

【質問②】

「内部監査との連携についてですが、連携会合で実際にどんな話をしていましたか。一番印象に残っている会合のエピソードを教えてください」

「エピソード」という言葉が来るとは思っていませんでした。

「N-2期の第3四半期の会合で、内部監査担当者から購買部門の相見積り取得率が低いという報告がありました。
私が追加確認したところ、特定の取引先への発注が集中していることが分かりました。これを受けて購買部門の往査を実施し、下請法のリスクを含む指摘事項を取締役会に報告しました」

具体的なエピソードが出てきたとき、担当者がメモを取る手が止まりました。
「記録ではなく体験として語れる」——これが実質的な連携の証明になります。

【質問③】

「3年間監査役をやってきて、一番難しかったのはどんな場面でしたか」
予想していなかった質問でした。

「社長に推薦されて就任した立場で、社長の判断に異議を唱えることです。特に最初の1年は、言うたびに関係が壊れるかもしれないという恐怖がありました。
それでも言い続けてきたのは、黙っていた場合に自分が後から説明できなくなるという危機感があったからです」

担当者はうなずきながら言いました。

「その感覚を正直に話してくれる監査役は、実際に機能している監査役だと思います」

仮設例_第2次書面質問&各種ヒアリング_ 【5週間目—取引所による監査役ヒアリング】

5週間目——取引所による監査役ヒアリング】

申請から5週間目に、取引所の審査担当者による直接ヒアリングが実施されました。

主幹事証券のヒアリングとは、明らかにスタンスが違いました。

主幹事は「一緒に審査を通過するための確認」という雰囲気があります。

取引所は「基準を満たしているかを判断する」という雰囲気です。

【取引所ヒアリングの構成】

【場所】取引所内の会議室
【参加者】審査担当者2名、主幹事証券担当者(同席のみ)、監査役(私)
【時間】約1時間30分


【冒頭の確認】

審査担当者が最初に言いました。

「今日は申請書類や書面質問の回答内容ではなく、監査役として実際にどのような活動をしてきたかを直接お聞きします。
資料を読んでの回答ではなく、ご自身の経験として話していただけますか」

「資料を読んでの回答ではなく」
——この一言が、ヒアリングの性格を示していました。

【取引所ヒアリングで問われた論点(主要なもの)】
「社長との関係について教えてください。社長に推薦されて就任したとのことですが、社長の判断に反する意見を述べにくいと感じたことはありましたか」

「取締役会で意見を述べた事例を3つ挙げていただきましたが、そのうち最も難しかったのはどれですか。その理由も教えてください」

「監査法人との連携で、監査役として最も重要だと感じた情報共有はどのようなものでしたか」

「内部監査の担当者(兼務)とはどのような頻度でどのようなコミュニケーションを取っていましたか。内部監査の結果を、ご自身の監査にどう活かしましたか」

「上場後、監査役としてどのような役割を果たしていきたいと考えていますか。現在の体制で不十分だと感じている点はありますか」

【取引所ヒアリングで問われた論点(主要なもの)】
「社長との関係について教えてください。社長に推薦されて就任したとのことですが、社長の判断に反する意見を述べにくいと感じたことはありましたか」

「取締役会で意見を述べた事例を3つ挙げていただきましたが、そのうち最も難しかったのはどれですか。その理由も教えてください」

「監査法人との連携で、監査役として最も重要だと感じた情報共有はどのようなものでしたか」

「内部監査の担当者(兼務)とはどのような頻度でどのようなコミュニケーションを取っていましたか。内部監査の結果を、ご自身の監査にどう活かしましたか」

「上場後、監査役としてどのような役割を果たしていきたいと考えていますか。現在の体制で不十分だと感じている点はありますか」

【取引所ヒアリングで最も印象に残った質問】
審査担当者の質問の中で、最も考えさせられたのはこれでした。

「この3年間で、監査役として『これはやっておけば良かった』と感じることはありますか」

即座に答えられませんでした。

少し考えて、正直に答えました。
「N-3期の最初の半年間、監査計画の策定に時間をかけすぎて、実際の往査の開始が遅れました。
計画を完璧にしようとするあまり、実施が後回しになった。もう少し早く現場に入っていれば、N-3期の指摘事項の改善も早かったと思います」

審査担当者は少し微笑みました。

「その反省が、N-2期以降の往査回数の増加につながっているということですね。改善の跡が見えます」

「完璧な回答」ではなく「正直な回答」——これが取引所ヒアリングで最も重要だということを、この瞬間に実感しました。


5週間目の終わり——主幹事証券からの中間報告】

5週間が終わった金曜日の夕方、主幹事証券の担当者から電話がありました。

「取引所から非公式に連絡がありました。監査役へのヒアリングについては、特に追加の確認事項はないとのことでした。
書面質問・ヒアリングを通じて、監査役の活動実態が確認できたという評価です」

電話を切った後、しばらく動けませんでした。

「監査役の活動実態が確認できた」——3年間のことが走馬灯のように浮かびました。

  1. 関連当事者取引に異議を唱えた日。
  2. 業績予測の数字に疑問を持った夜。
  3. 取締役会の議事録に署名を求められて、それを断った午後


全部、記録に残っていた。
全部、自分の言葉で話せた。


【5つの教訓】

①第2次書面質問は「具体性を問う深掘り」と心得る

第1次への回答を受けて、取引所は「本当にそれをやったのか」を確認してきます。「具体的な日付・場面・内容・結果」を記録として示せることが、実質的な監査の証明になります。

②「通報がなかった理由」まで正直に書く

内部通報がなかった場合、「なぜなかったのか」という認識まで問われます。「問題がなかったから」という回答より、「窓口に課題があったが改善した」という正直な回答の方が、審査官の信頼を得ます。

③ヒアリングは「資料を覚えてくる場」ではなく「体験を語る場」

書面回答と口頭説明の一貫性を確認するヒアリングでは、資料を読み上げるのではなく、自分の体験として語れるかが問われます。「一番印象に残った会合のエピソード」という質問が来ることが象徴的です。

④「難しかった場面」「反省点」を正直に話す

「完璧な監査役」像を演じようとすると、審査官は逆に不信感を持ちます。「最も難しかったのはどんな場面か」「やっておけば良かったこと」という問いには、正直に答えることが最善です。改善の跡が見えることが評価につながります。

⑤「審査は日頃の監査活動の答え合わせ」という実感

書面質問への回答も、ヒアリングへの対応も、「日頃やってきたことを事実として示す」という作業です。記録がなければ示せない。記録があっても体験として語れなければ信用されない。審査の準備は申請の瞬間に始まるのではなく、就任した初日から始まっています。

本事例は実務でよくあるパターンをもとにした仮設例です。特定の企業・個人を指すものではありません。
出典:IPO監査役ひろば(https://www.kansayaku.net/)

③監査法人への直接ヒアリング:5週間目〜6週間目

  • 主幹事審査との大きな違いがここです。取引所の審査官は、会社の頭越しに担当監査法人に対して直接ヒアリングを行います。
  • 「会社側の決算体制やキーパーソンの資質、監査上の主要な検討事項(KAM)への対応について、プロの会計士から見て本当に問題ないか」を裏から検証します。

仮設例_③監査法人への直接ヒアリング

本事例は実務でよくあるパターンをもとにした仮設例です。特定の企業・個人を指すものではありません。

監査法人への直接ヒアリングに監査役は原則として同席しません。
 ただし「関わる場面」は確実に存在します。整理してお伝えします。

監査法人への直接ヒアリングとは
取引所審査では、会社の申請書類・経営陣へのヒアリングに加え、会計監査人(監査法人)に対して直接ヒアリングを実施します。

目的は「会社から聞いた話と、監査法人が把握している実態が一致しているか」を独立して確認することです。


監査役が直接関わる場面——3つのパターン

パターン①:事前の情報共有(最も重要)

ヒアリング前に、監査法人の担当パートナーと監査役の間で「取引所から何を聞かれそうか・どう答えるか」を確認し合う場面があります。

具体的には以下のような会話になります。

監査役 →
「三様監査の連携について、監査法人は取引所にどのように説明する予定ですか。私の認識と合っているか確認させてください」

監査法人 →
「私どもは四半期ごとに監査役と連携会合を実施し、発見事項を共有してきたと説明します。
特にN-2期の購買部門の問題を監査役が把握して取締役会に報告した経緯も伝える予定です」

【ポイント】

三様監査の連携が実質的に機能していたかどうかは、監査法人と監査役の「話の一致」で審査されます。
事前に認識を合わせておくことは「打ち合わせによる回答合わせ」ではなく「実態の確認」として必要な作業です。


【パターン②:ヒアリング後の報告受領】

取引所からのヒアリングが終わった後、監査法人パートナーから監査役に「どんな質問が来たか・どう答えたか」を報告してもらう場面があります。

監査法人 →
「今日のヒアリングでは、三様監査の連携実態と、N-1期の業績についての監査意見の根拠を中心に聞かれました。監査役との連携については、具体的な事例として購買部門の指摘事項の共有を説明しました」

監査役 →
「私へのヒアリングでも同じ事例を挙げました。話の内容は一致していますね」

【ポイント】

ヒアリングの内容が監査役に報告されることで、「会社・監査法人・監査役の三者の説明が一致している」という確認ができます。
これ自体が三様監査が機能していた証拠の一つになります。

【パターン③:追加確認の要請が来る場合】

取引所が監査法人へのヒアリングで「監査役の活動実態についてもう少し詳しく確認したい」と感じた場合、監査役への追加の書面質問や補足資料の提出依頼という形で、間接的に監査役に跳ね返ってくることがあります。

例えばこのような流れです。

取引所が監査法人に「三様監査の連携は具体的にどう行われていたか」と質問

監査法人が「監査役との四半期連携会合で発見事項を共有していた」と回答

取引所が「その会合の議事録・記録を提出してほしい」という補足資料要請を会社に送付

会社が監査役に「連携会合の記録を出してほしい」と依頼

この流れで、監査役が持っている連携記録の存在が問われる場面があります。

【監査法人ヒアリングで「監査役の名前が出る」典型的な質問】

取引所が監査法人に対して行う質問の中で、監査役が直接話題になる典型的な質問があります。

「監査役との連携は実質的に機能していましたか」

監査法人の立場から「はい」と答えるためには、具体的な連携の事実が必要です。「会合を開いていた」だけでなく「監査役が発見事項を受けて実際に動いた事例」まで言えることが、「実質的な連携」の証拠になります。

「今期の監査意見(適正意見)を表明した根拠を説明してください」

監査法人が適正意見を表明した根拠の一部として「監査役監査との連携で内部統制の実態を確認した」という説明が含まれる場合があります。ここで監査役の活動実態が間接的に問われます。

「会計処理の判断で、監査役に報告・協議した事項はありましたか」

特に収益認識・引当金・関連当事者取引などの判断について、監査法人と監査役の間でどのような情報共有があったかが確認されます。

監査役として事前に準備しておくべきこと
監査法人へのヒアリングに監査役は同席しませんが、以下の準備が重要です。

①三様監査の連携記録を整備しておく

取引所から補足資料要請が来たときに即座に提出できるよう、連携会合の議事録・メモ・発見事項の共有記録を体系的に整理しておく。

②監査法人パートナーとの「認識合わせ」を事前に行う

ヒアリング前に「私はこう話す予定です。監査法人はどう答えますか」という確認の場を持つ。
回答を合わせるのではなく、実態が一致していることを確認する。

③監査法人が「実質的な連携」として語れる事例を共有しておく

監査法人が「連携した具体的な事例」として取引所に説明できるよう、監査役として関与した事例(発見事項の共有を受けて追加往査した・取締役会への報告を求めた等)を事前に整理して伝えておく。

仮設例で描くとすれば——「ヒアリング前夜の電話」
監査法人ヒアリングに関する場面を仮設例なら、

取引所による監査法人ヒアリングの前日夜、監査法人のパートナーから電話がありました。

「明日のヒアリングの前に、一点確認させてください。
三様監査の連携で、監査役が私どもの発見事項を受けて実際に動いた事例として、私はN-2期の購買部門の件を説明しようと思っています。
監査役の認識と一致していますか」

「はい。
あの件は監査法人から『購買部門の外注費の計上に不自然な点がある』という情報共有を受けて、私が独自に往査した経緯があります。
監査調書にも記録があります」

「ありがとうございます。もう一点——内部通報の件ですが、社員が監査役に直接申し出た事案についても聞かれる可能性があります」

「はい。
その件は監査役として事実確認・第三者調査を主導しました。
主幹事にも報告済みです。書面回答にも記載しています」

「分かりました。認識が一致しています。
明日、よろしくお願いします」

電話を切った後、私はノートに書きました。

「監査法人と私の話が一致している。
それは、実際に一緒に動いてきたから当然のことだ」

本事例は実務でよくあるパターンをもとにした仮設例です。特定の企業・個人を指すものではありません。

④実地調査(現場の視察):6週間目〜7週間目

  • 取引所の審査官が実際に貴社の本社オフィスや、主要な工場・店舗・物流センターなどに足を運びます。
  • 社長室や役員室、管理部門のセキュリティ体制(入退室管理や重要書類の保管状況)を物理的にチェックし、「書類通りのガバナンスが実在しているか」を目で見て確認します。

⑤社長面談(最終面談) ➔ 上場承認:8週間目〜10週間目 

  • すべての書面・ヒアリングをクリアすると、最終関門である「社長面談」がセットされます。取引所の役員や審査懇談会のメンバーが、社長の経営哲学や将来の成長戦略、コンプライアンスへの覚悟を直接問い質します。


  • ここをパスすると、数日後に晴れて「上場承認」が下り、世の中に公表されます。

特段の問題が認められないケースを前提・・・

  • いずれも「特段の問題が認められないケース」を前提とした標準期間です。審査上の問題が発見された場合や、未発覚の事実が判明した場合は延長されます。また上場申請日から1年を超える場合は再申請が必要です。

ブックビルディング(需要予測)から公募価格決定まで

 ※上場承認から実際の「上場日(売買開始日)」までは、さらにブックビルディング(需要予測)や公募価格決定などの手続きで約1ヶ月かかります。そのため、申請から上場日まではトータルで約3ヶ月となります。 

3.監査役面談で問われるポイント

監査役面談では、以下が重点的に確認されます。 

  1. 具体的なリスクを明確に把握しているか 
  2.  具体的にどのように指摘したか 
  3.  改善が実行されているか

 

失敗しやすい典型パターン 3つ

  • 以下は審査で評価を落とす代表例

❌①「特に課題はありません」
❌②受け身の姿勢
❌③抽象的な回答

❌①「特に課題はありません」

👉 リスク未検知と判断される

❌②受け身の姿勢

 「報告を受けているだけ」

 「問題があれば対応する」
👉 監査役として機能していないと評価される

❌③抽象的な回答

具体事例がない 

👉自分の言葉で説明できない

4.👉 実務で差がつくポイント

評価が高い監査役の共通点

  1. 自分の言葉で説明できる 
  2. 具体的な事例を持っている 
  3. 経営に対して適切に意見している

👉 “形式”ではなく“実効性”が評価される

 🎯 まとめ

IPO審査において監査役に求められるのは以下です。

  •  独立した視点 
  •  実務に基づく判断 
  •  改善への関与

 👉 「問題がない」ではなく  
  「 問題を把握し、対応している」ことが重要です

5.実務で押さえるべきチェックポイント

チェックリスト
□ 自社の主要リスクを説明できるか 
□ 指摘事項を具体的に説明できるか 
□ 改善状況を把握しているか 
□ 監査法人・内部監査と連携しているか 
□ 定期的に監査を実施しているか

 Ⅰ.取引所審査の質問項目

  1. コーポレート・ガバナンスの「実質性」(形式主義の排除)
  2. 主幹事証券や監査法人への「依存度」 
  3. 関連当事者取引の「必要性と妥当性」(利益相反・公私混同の徹底排除) 
  4. 業績未達や不祥事発生時の「防波堤能力」(社会的責任) 
  5. コンプライアンス・反社会的勢力排除の実効性

1.コーポレート・ガバナンスの「実質性」(形式主義の排除)

  • 規程が揃っていることは大前提として、それが「実際に血の通った運用をされているか」を厳しく問われます。


【具体的な質問項目】

  • 「取締役会において、社外取締役や社外監査役から厳しい意見や反対意見が出た直近の具体例を教えてください。また、その意見によって議案はどう修正されましたか?」


  • 「監査役会において、最も時間をかけて議論したテーマ(決議事項・報告事項)は何ですか?なぜそれが論点になったのですか?」


  • 「常勤監査役として、日々どのように情報収集を行っていますか?執行府のミーティング(常務会など)への出席実態を教えてください。」

2.主幹事証券や監査法人への「依存度」

  •  「主幹事の言う通りにやっています」は東証審査では通用しません。会社が自立したガバナンス能力を持っているかを見られます。


【具体的な質問項目】

  • 「主幹事証券や監査法人の指摘に対して、会社側(あるいは監査役会)として『いや、当社のビジネスモデルではこの運用が正しい』と議論し、独自のガバナンス体制を構築した事例はありますか?」


  • 「内部監査室の独立性は担保されていますか?経営陣の意向によって、内部監査の計画や報告内容が書き換えられるリスクを、監査役としてどう牽制していますか?」 

3. 関連当事者取引の「必要性と妥当性」(利益相反・公私混同の排除) 

  •  主幹事審査のみならず取引所審査でも、「関連当事者取引(関係会社間取引や、役員・大株主とその親族との取引)」は最重要チェック項目の一つとして、非常に厳しくチェックされます。


  • IPO審査において、なぜこれがこれほど重視されるかというと、「上場企業として、一般の株主から集めた大切なお金を、社長個人の利益や身内の会社に流している(利益供与・公私混同)のではないか」という強い疑念(投資家保護の観点)を持たれるからです。


  •  「書類はあるけど、監査役として本当に納得してる?社長に忖度してない?」という【実質・本音】のチェック。


【実質性の検証と、隠蔽のチェック】

  • 「主幹事の指導で書類は綺麗になっているが、それは形だけではないか? 監査役や取締役会は、社長に押し切られずに本当に厳しい目でその取引をチェックしたのか?」を見ます。つまり、書類の裏にある「ガバナンスの血の通い方」を厳しくテストされます。 

4.業績未達や不祥事発生時の「防波堤能力」(社会的責任) 

  • 上場後に会社がピンチに陥った際、監査役が「投資家保護」のセーフティネットとして機能できるかを詰められます。


【具体的な質問項目】

  • 「万が一、通期の業績予想(予算)が大幅に未達となりそうな場合、経営陣が数字を『作る(不適切会計・押し込み売上)』暴走に走らないよう、期末監査でどのようなカットオフ検証(期間帰属のチェック)を強化しますか?」


  • 「同業他社で発生した不祥事(例:インサイダー取引、個人情報漏洩、下請法違反など)を受け、自社において同様のリスクがないか、監査役会としてどのような臨時監査や体制確認を行いましたか?」 

5. コンプライアンス・反社会的勢力排除の実効性

  • 取引所が最も恐れる「上場後の反社トラブル」や「法的リスク」に対する最後の砦としての姿勢を問われます。


【具体的な質問項目】

  • 「反社会的勢力排除のための属性照合や、新規取引先審査のプロセスにおいて、管理部門のチェックをすり抜ける例外(社長のトップ営業案件など)を排除する仕組みを、監査役としてどう監視していますか?」


  • 「万が一、事後的にリスクのある先との取引が発覚した場合、監査役会としてどのような解毒(契約解除・関係遮断)の決議を行いますか?」

Ⅱ.主幹事審査 vs 取引所審査の目線の違い 

 【 質問のテーマ 】


 取締役会の運営 



 往査・現場監査



 トラブルへの対応

【 主幹事審査の目線
(指導・粗探し) 】

  •  議事録の体裁は整っているか? 開催頻度は規程通りか? 



  •  往査の計画書や調書などの「エビデンス」が揃っているか? 


  •  規程に沿ったエスカレーションルートが設計されているか?

 【 🏛️ 取引所審査の目線
(実質・投資家保護) 】

  •  書類上の綺麗さではなく、実際に経営陣への牽制が行われているか?


  •  監査役自身が現場のリアルなリスクを自分の言葉で語れるか?


  • 経営陣に不都合な事態が起きた際、本当に「情報遮断」をして外部弁護士を動かす胆力があるか?

Ⅲ.主幹事審査 vs 取引所審査の基本的スタンスの違い 



 審査期間







 「裏付け調査(三者面談的なチェック)」が入るか?










【基本的スタンス】

【 主幹事審査 】

  •  3ヶ月〜半年(場合によってはそれ以上)かけて、課題を見つけては直し、見つけては直し…と、キャッチボールを何度も行う猶予がありました。 



 











  • 「指導」

主幹事証券は「上場させたい」というインセンティブがあるため、厳しい中にも「こう直せば通るよ」というアドバイス(指導)が含まれていました。 

 【 🏛️ 取引所審査 】

  •  わずか2〜3ヶ月しかありません。取引所からの質問に対する回答期限は「厳守」であり、経営陣と事務局、主幹事証券が深夜までかかって回答パズルを組み上げるような、極めてタイトな総力戦になります。 


  • 会社が提出した書類や主幹事証券の推薦の言葉を100%鵜呑みにはしません。前述の通り、監査法人に直接意見を求めたり、主幹事証券の引受部門に対して「本当にこの会社を推薦できるのか」を裏で詰めたりします。 ここで監査役の「三様監査(監査役・内部監査・監査法人)の連携実績」が本当に行われていたかどうかが効いてきます。


  •  「審判」 

 取引所は市場の信頼を守る「番人」です。「問題があるなら、今回は上場を見送ってください」という冷徹な審判を下す立場にあります。

NG回答・OK回答

 【質問】


  • 「社外役員の発言状況は?」

 




  • 「不適切会計を防ぐための対策は?」 

【 ❌ 形式的なNG回答 
(審査官が疑念を持つ)】

  • 「毎回、活発なご意見をいただいており、特段のトラブルなく円滑に運営されています。」

 


  • 経理規程に基づき、監査法人の四半期レビューを適切に受けているので問題ありません。」

 【⭕ 実質的な回答
(審査官が安心する)】 

  •  「前回の取締役会で、〇〇の投資案件に対し社外取からリスク指摘があり、一度決議を保留にして条件を再検証させました。」 


  •  「N-1期の第4四半期に、売上の前倒しリスクを警戒して、内部監査室と合同で受注・納品書のサンプル往査を実施しました。」 

 ヒアリング当日に手元に揃えるべき「エビデンス・リスト」 

 【カテゴリ】

 監査役会の活動実態

 


現場監査の実績




 執行側への牽制実績
 




三様監査の連携




 内部通報の運用

【 準備すべき具体的な証拠書類】


  • 監査役会議事録(直近2〜3年分)
  • 監査方針および監査計画書 




  • 往査(実地監査)計画書・往査調書
  • 現場への指摘事項一覧・改善報告書


  • 取締役会での発言録(取締役会議事録)
  • 代表取締役との定例面談記録
  • (有事の際の)ガバナンス是正勧告書


  •  三様監査(監査役・内部監査・会監査法人)ミーティングの議事録・メモ

  

 

  • 内部通報規程・ヘルプライン運用細則
  • 全社向けの窓口周知周知エビデンス(ポスターやイントラ画面の魚拓)
  • 外部弁護士等への調査委託契約書

 【 審査官のチェックポイント】

  • 形だけの「全員一致で承認」ではなく、内部通報や往査の不備に対して「監査役間でどのような激しい議論が行われたか」の文面


  •  監査役自ら足を運び、ミクロ(伝票確認)とマクロ(ヒアリング)の視点で現場のリスクを自力で見つけているかの形跡


  • 社長に対して迎合せず、リスクのある投資案件や労務問題に対して公式にブレーキをかけた形跡




  •  縦割りにならず、監査法人の警戒するリスク(収益認識など)を共有し、社内で先回りしてウミを消しているかの連携実績


  • 窓口が経営陣から独立しており、社員が安心して駆け込める「安全弁」として実質的に機能しているかの証明

 審査突破の肝

  • 審査官は、主幹事証券が提出した「非の打ち所がない綺麗な報告書」を疑うことからスタートします。 そこで監査役が「我が社は完璧です」と答えると、逆に『この監査役は機能していない(見えていない)』と判断されかねません。


  • 「上場準備の過程でここが課題として見つかり、私がこのように執行側に介入して、現在の形に修正させた」という、生々しい「ガバナンスの修正履歴」を語ることこそが、審査をストレートで突破する唯一の道です。

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