IPOで関与する監査法人の部門

  •  IPO準備における監査法人の関与は、「ただハンコを押すだけの会計監査」ではありません。上場準備フェーズに応じて、監査法人内の異なる専門部隊が連携しながら、企業の会計とガバナンスを上場基準へと引き上げていきます。


  • 監査役が「監査法人の誰が、どのフェーズで、何を見に来るのか」を把握するための、監査法人内の主要な関与部門(チーム)とその役割を整理しました。 


1.IPOアドバイザリー部門(予備調査・ショートレビュー担当)

2.監査実施部門(主査・監査チーム)
3.審査部門(品質管理部門)

4.専門アドバイザリー部門(IT監査・税務専門チームなど)

  •  【社長向け】監査法人は「答え」を教えてくれない。だからこそ監査役の力が必要になります。

1.IPOアドバイザリー部門(予備調査・ショートレビュー担当)

【役割】 

  • 上場に向けた「健康診断」を行う部隊


【関与時期】 

  • 上場準備の初期フェーズ(N-3期以前など)


  • 企業が本格的に上場準備を始める前に、「ショートレビュー(予備調査)」という健康診断を実施するチームです。


  • 現状の会計処理、内部統制、ガバナンス体制が、上場基準(東証の求めるレベル)からどれくらい乖離しているかを洗い出し、課題を一覧にした「課題抽出レポート」を作成します。この時点では「監査」ではなく「コンサルティング・指導」の色彩が強いです。

2.監査実施部門(主査・監査チーム)

【役割】 

  • 現場に赴き、数字と実態をチェックする「最前線部隊」


【関与時期】

  •  N-2期(直前々期)〜上場後継続


  • 企業の現場に赴き、実際の会計監査業務(往査、帳簿の照合、棚卸立会など)を行うメインのチームです。通常、「主査(インチャージ)」と呼ばれる現場責任者を中心に、若手から中堅の会計士で構成されます。


  • 会社側(経理部門や内部監査室、常勤監査役)と日々コミュニケーションを取り、「この会計処理は上場基準に照らして妥当か」「規程通りに運用されているか」を泥臭く検証します。三様監査において、常勤監査役が最も頻繁に連携するのはこのチームの主査です。

 3.審査部門(品質管理部門)

【役割】

  •  監査チームの判断を裁く「監査法人の社内警察」


【関与時期】 

  • 監査意見表明前(主に期末や重要な会計処理の判断時)


  • 監査チーム(現場)が出した「この会社の会計処理は適正である(無限定適正意見)」という結論が、監査法人の看板を背負って世に出してよいものかを、完全に独立した立場で最終審査する部門です。


  • IPOにおいては、証券会社の審査部と同様に極めて厳しい目線を持ちます。現場の監査チームに対して「本当にこの売上計上基準で問題ないという証拠(エビデンス)は揃っているのか?」と厳しく突き上げます。

4.専門アドバイザリー部門(IT監査・税務専門チームなど)

【役割】 

  • 特定領域の「スペシャリスト部隊」


【関与時期】

  •  必要に応じて随時(特にIT統制評価や複雑な税務処理)


  • 通常の監査チームだけでは判断が難しい、高度な専門領域をサポートする部隊です。


  • 特にIPOで重要になるのが「IT監査部隊」です。会計システムの権限設定、ログ管理、システム開発のプロセス(IT全般統制)が、J-SOX(内部統制)の基準を満たしているかを専門的に評価します。

 🔄 【対比表】証券会社との役割の違い 





【主な目的】 



 【スタンス】




 【コンサルとの関係】

 🏦 証券会社(公開引受部・審査部


 「上場させること」と「投資家保護」 


 業績やビジネスモデル、ガバナンス全般を総合的に評価し、東証へ「推薦」する。 


 引受部は、規程の書き方など手取り足取りの「指導(コンサル)」が可能。

 🏢 監査法人(監査チーム・審査部門)


 「財務諸表の適正性の担保」



 会計処理と内部統制がルール通りか、独立した立場で「意見表明(監査証明)」を行う。 


自己監査の禁止ルールにより、「監査」と「指導(コンサル)」は厳格に分けられる。(※監査法人は答えを教えてくれない)

 【社長向け】監査法人は「答え」を教えてくれない。

だからこそ監査役の力が必要になる。

  •  監査法人はルール上(独立性の観点から)、会社が行った会計処理を「チェック(監査)」することはできても、会社に代わって答えを作ったり、手取り足取り「指導」したりすることは禁じられています。


  • 監査法人から「このままでは監査意見を出せません(上場できません)」と突き放されたとき、社内に「どうすれば東証や監査法人の基準をクリアできるか」を自ら考え、各部門を動かせる人間がいなければ、IPOはそこで座礁します。


  • だからこそ、外部の基準を知り尽くし、監査法人と対等に渡り合いながら、社内に「改善実績」を作らせることができる頼りがいのある常勤監査役の存在が、IPOの成否を分ける決定的な要素となるのです。

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